2004 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムシグナルによる神経成長円錐の動態制御機構の解析
Project/Area Number |
16700297
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
戸島 拓郎 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, 研究員 (00373332)
|
Keywords | 神経成長円錐 / カルシウム / アクチン後方移動 / 神経接着分子 / 分子クラッチ / 蛍光スペックル顕微鏡法 / 光ピンセット法 / ケージド化合物光解離法 |
Research Abstract |
神経系の発生過程において神経軸索先端部に現れる成長円錐は,多くの場合外界環境受容に伴うカルシウムシグナルによりその移動方向を転換させ,軸索を遠隔の標的へと牽引する。成長円錐の移動速度を規定する素要因は,1.アクチン後方移動の速度,2.アクチン線維-接着分子間クラッチの結合効率,3.エンドサイトーシスされた接着分子/膜小胞のリサイクル速度・効率,の3点に要約される。すなわち成長円錐の方向転換(誘引・反発)は,カルシウムシグナルが上記3要因のいずれかに変化を誘発し,その結果として成長円錐の左右で移動速度の非対称が生じた結果として説明できる。 平成16年度は,まず要因1.を検証するために,蛍光スペックル顕微鏡法を確立した。低濃度の蛍光標識ファロイジンを鶏卵胚後根神経節細胞に導入し高感度CCDカメラで追跡したところ,成長円錐周辺部におけるアクチン後方移動を可視化することに成功した。さらに,ケージド化合物光解離法により成長円錐局所カルシウムシグナルを誘発し,これに対するアクチン動態の変化を解析したところ,カルシウムに応じた後方移動速度の変化は観察されなかった。 続いて要因2.を検証するために,光ピンセット法を用いてアクチン線維-接着分子間クラッチ結合効率を解析した。成長円錐上で接着分子と結合したビーズは,クラッチ解離状態では形質膜上でブラウン運動を呈し,クラッチ結合状態ではアクチン後方移動と共に形質膜上を逆行性移動する。局所カルシウムシグナル誘発時におけるビーズの運動を追跡したところ,カルシウムに応じた運動性変化は観察されなかった。 以上の結果から,成長円錐の方向転換を誘発するカルシウムシグナルは,アクチン後方移動およびアクチン線維-接着分子クラッチ接続効率に対しては影響を及ぼさないことが示唆された。平成17年度は接着分子/膜小胞リサイクル(要因3)について解析を進める予定である。
|