2004 Fiscal Year Annual Research Report
ホメオボックス型転写因子Arx遺伝子欠損マウスを用いた嗅覚神経回路形成機構の解析
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16700300
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉原 誠一 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (90360669)
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Keywords | 嗅覚神経系 / 嗅球 / 介在ニューロン / 嗅細胞 / 軸策投射 / ホメオボックス遺伝子 / radial glia |
Research Abstract |
ホメオボックス型の転写因子であるArx遺伝子の欠損マウスにおいては嗅球の形態異常が報告されている。本年度はArx遺伝子の嗅覚神経系構築過程における機能を明らかにするために、Arx遺伝子欠損マウスの嗅覚神経系を詳細に解析した。 まず最初に嗅覚神経系におけるArx遺伝子発現細胞の同定を免疫組織染色によって行った。その結果、Arxは胎生期および出生後のマウスにおいて嗅球内のGABA陽性介在ニューロン及びradial gliaに発現していることが明らかになった。嗅上皮で匂い分子の受容を司る嗅細胞においてはArxの発現は見られなかった。 次にArx遺伝子欠損マウスにおける嗅球内介在ニューロンの分化および分布を調べたところ、GABA陽性ニューロンへの分化は起こっていたがそれらの介在ニューロンは嗅球へ侵入できないという嗅球の発生異常が見られた。またArx遺伝子欠損マウスの嗅球においてはtyrosine hydroxylase陽性介在ニューロンが検出されなかった。Arx遺伝子は嗅球の介在神経の移動に関与する遺伝子の発現を制御していることが推測される。 またArx遺伝子欠損マウスの嗅球においては嗅球の層形成にも異常が見られた。 さらにArx遺伝子欠損マウスでは嗅球内ニューロンのみならず、嗅細胞の嗅球への軸索投射にも異常が見られた。新生時のArx遺伝子欠損マウスにおいては、一部の嗅細胞の軸策は嗅球へ到達していたが大部分の嗅細胞の軸索は嗅球へ投射せずに嗅球の前方で停留し、大きな糸球状の構造体を形成していた。Arx遺伝子は嗅細胞に発現していないことから、嗅球に存在し、嗅細胞の軸索投射を制御する分子の発現をArx遺伝子が制御していると考えられる。 以上の結果からArx遺伝子は嗅球内介在ニューロンの移動・分化、嗅球の層構造形成及び嗅細胞の軸索投射に必須な遺伝子であることが明らかになった。
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