2005 Fiscal Year Annual Research Report
ホメオボックス型転写因子Arx遺伝子欠損マウスを用いた嗅覚神経回路形成機構の解析
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16700300
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉原 誠一 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (90360669)
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Keywords | 嗅覚神経系 / 嗅細胞 / 嗅球 / 転写調節因子 / 軸索投射 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本年度は理化学研究所・発生再生科学総合研究センターの体軸形成研究チームとの共同研究でFez遺伝子のノックアウトマウスの一次嗅覚神経経路の解析を行った。 Fez遺伝子はジンクフィンガー型転写調節因子であり、一次嗅覚神経回路においては嗅細胞のみにその発現が見られる。このFez遺伝子のノックアウトマウスを解析したところ、このノックアウトマウスでは全ての嗅細胞が嗅球へと軸索を投射できずに軸索とグリア細胞からなる糸球状の構造体を形成していた。さらに嗅球介在神経細胞の移動と嗅球の層形成にも異常が見られ、前年度に解析を行ったArxノックアウトマウスとよく似た表現型を示した。Fez遺伝子は嗅細胞のみに発現が見られ嗅球には発現していないことから、Fezノックアウトマウスで見られた嗅球の層形成の異常は嗅細胞の軸索投射異常に由来することが推測される。Fezノックアウトマウスにおいてトランスジェニックマウスを用いて嗅細胞特異的にFez遺伝子を発現させると嗅細胞の軸索投射異常と嗅球の層形成の異常が共にレスキューされることから上で述べた仮説が正しいことが証明された。すなわち、嗅細胞が嗅球に軸索投射することが嗅球の正常な層形成には必要であることが明らかになった。 Arx遺伝子とFez遺伝子の二種類のノックアウトマウスの解析から嗅細胞の軸索投射と嗅球の層形成はそれぞれ独立して起きるが、この二つの現象は互いに影響を及ぼしながら相互依存的に発達していくことが明らかになった。また嗅細胞の軸索投射については以下に述べるようなモデルが考えられた。嗅細胞の軸索投射を制御する分子の発現は嗅細胞においてはFez遺伝子によって制御され、嗅球の細胞においてはArx遺伝子によって制御されていることが推測された。また嗅細胞と嗅球の細胞とで発現している分子同士はレセプターとリガンドの関係になっていることも予想された。
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