2004 Fiscal Year Annual Research Report
単離脳標本を用いた扁桃体‐海馬システム間の相互作用に関する生理学及び解剖学的研究
Project/Area Number |
16700315
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
梶原 利一 独立行政法人産業技術総合研究所, 脳神経情報研究部門, 研究員 (60356772)
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Keywords | イメージング / 膜電位感受性色素 / 単離脳標本 / 海馬 / 扁桃体 / 扁桃体周囲皮質 / 嗅内皮質 / 梨状皮質 |
Research Abstract |
大脳辺縁系の一部を成す扁桃体および海馬体は、大脳皮質由来の高次処理情報に基づいて情動発現や記憶形成に中核的な役割を果たしている。これら扁桃体と海馬それぞれを中心とした神経回路が具体的にどのように結びつき機能しているかを、情報の流れを追って生理学的に示した研究は極めて少ない。本研究課題では、扁桃体と海馬の両神経回路を3次元的に保持したモルモット単離脳標本に膜電位イメージング手法及び電気生理学的手法を適用し、これら異なる神経回路間の相互作用に関わる神経科学的基盤を明らかにする事を目標とした。大脳辺縁系は解剖学的に多様な感覚情報が統合される部位として位置付けられているが、本研究では特に、嗅覚情報の伝達様式に着目して研究を遂行した。嗅覚情報は梨状皮質-扁桃体周囲皮質を介して扁桃核に入力する経路(扁桃体システム)、及び、梨状皮質-嗅内皮質を介して海馬へ入力する経路(海馬システム)、それぞれのシステムにおいて階層的な段階を経て並列情報処理がなされると考えられている。平成16年度は、これら並列関係にあるシステム同士の機能連関を担う脳部位を同定する事を第一の目標として研究を行い、以下に述べる成果が得られ、成果の一部をヨーロッパ神経科学学会にて発表した。 1、前述した二つの経路が、外側嗅索の電気刺激により実際に活性化される事を膜電位イメージング手法により確認した。 2、1の実験にて、嗅内皮質の神経活動が海馬体のみならず扁桃体周囲皮質へも伝達される事が初めて明らかとなった。この結果は、扁桃体システムと海馬システム間の機能連関部位の一つが扁桃体周囲皮質である可能性を示唆している。 3、単離脳標本にて、ガラス管微小電極による細胞内記録を行う為の実験系を確立した。実験は現在継続中であるが、扁桃体周囲皮質の単一神経細胞が梨状皮質及び嗅内皮質の二領野から入力を受けている可能性を示す結果が得られつつある。
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