2004 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄後角における痛覚情報伝達に及ぼすプロテアーゼ受容体活性化の効果
Project/Area Number |
16700340
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 助手 (70336139)
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Keywords | rexcitatory transmission / nociception / peptide / proteinase-activated receptor / rat / spinal dorsal horn / substantia gelatinosa / whole-cell patch-clamp technique |
Research Abstract |
本研究の目的は、proteinase-activated receptor (PAR)が痛覚情報伝達をどのように制御しているかをシナプスレベルで解明することである。本年度は、PARファミリーの一員であるPAR-1およびPAR-2に着目し、脊髄スライスを標本として痛覚情報伝達の制御に重要な役割を持つ膠様質ニューロンに対してブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用して電気生理学的な実験を行なった。まず、合成アゴニストペプチドの灌流投与によるPAR-1およびPAR-2の活性化が保持膜電流に対してどのような作用を及ぼすのかについて検討した。PAR-1、PAR-2共に保持膜電流に影響しなかったことから、これらの受容体の活性化はシナプス後細胞には直接影響しないことが示唆された。次に、自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)に対するPAR-1およびPAR-2活性化の作用を検討した。その結果、PAR-1の合成アゴニストペプチドによってsEPSCの発生頻度が可逆的に増加する一方(2.4倍)、振幅は変化しないことが分かった。また、PAR-2の合成アゴニストペプチド投与によりsEPSCの発生頻度および振幅の変化は見られなかった。これらのことより、シナプス前終末におけるPAR-1の活性化は神経終末からのグルタミン酸放出を促進することが明らかとなった。 PAR-1およびPAR-2は末梢において炎症や炎症性疼痛に関与していることが知られているが、本研究よりPAR-1の活性化が脊髄膠様質において痛覚情報伝達の制御に関与していることが明らかとなった。今後は、VR1受容体等の痛み伝達に関与する他の受容体とPARとの相互作用に着目しつつ、脊髄膠様質におけるシナプス伝達制御に対するPAR活性化の作用についてさらに詳細に検討する。
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