2004 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザル盲視モデルによる視覚的意識と注意との関係に関する認知神経科学的研究
Project/Area Number |
16700343
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉田 正俊 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助手 (30370133)
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Keywords | 膝状体外経路 / 空間的注意 / 視覚意識 / 急速眼球運動 / 盲視 / 残存視力 |
Research Abstract |
二匹のニホンザルにおいて各種の眼球運動課題の習得を済ませた後、片側の第一次視覚野の除去手術を行った。手術後の再トレーニングによって以下の知見を得た。 (1)術後の欠損半視野において、強制選択型の視覚誘導性眼球運動課題を遂行できることを確認した。欠損半視野で弁別できる標的刺激の閾値は手術前と比べて上昇していた。このことは、第一次視覚野を介さない経路によって残存視力による視覚運動変換が行われていることを示している。 (2)強制選択型の視覚誘導性眼球運動課題において、注視点消去から視覚標的提示までに100msのgapを導入することによって、急速眼球運動の応答潜時が低下することを見出した(gap効果)。この応答潜時(120ms程度)は"express saccade"として知られるものに近い。このことは、第一次視覚野を介さない経路による視覚運動変換がgap効果によって修飾されることを示している。 (3)欠損半視野に提示したprecue刺激が標的刺激を予告するとき、視覚誘導性眼球運動課題の弁別閾値および反応潜時の低下が起こることを見いだした。このことは、第一次視覚野を介さない経路が空間的注意を向けるメカニズムにも寄与していることを示している。 (4)欠損半視野に提示した手がかり刺激を用いて、記憶誘導性眼球運動課題を遂行できることを見出した。このことは、第一次視覚野を介さない経路が手掛かり刺激の位置情報を遅延時間のあいだワーキングメモリーとして保持することおよび急速眼球運動の標的として合目的な行動に利用することに寄与していることを示している。
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