2005 Fiscal Year Annual Research Report
体液環境下におけるポリペプチド表面でのアパタイト形成機構の解明
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16700365
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 敏樹 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 助手 (20324973)
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Keywords | ポリペプチド / アパタイト / 擬似体液 / ポリグルタミン酸 / カルシウムイオン / カルボキシル基 / 有機-無機ハイブリッド |
Research Abstract |
前年度の研究においては,側鎖にカルボキシル基を持つグルタミン酸やアスパラギン酸などの酸性アミノ酸を30mol%程度含有する植物由来ポリペプチド表面における体液類似水溶液中でのアパタイト形成能を調べた。その結果,これらポリペプチド薄膜を予め1mol/Lの塩化カルシウム水溶液で処理しておけば,体液類似水溶液中で表面に骨類似アパタイト層が形成されることを明らかにした。 今年度は,ポリペプチドのカルボキシル基がアパタイト形成に及ぼす影響を明らかにするため,酸性アミノ酸であるグルタミン酸のみから構成されるポリグルタミン酸からゲルを調製し,そのアパタイト形成能を体液類似水溶液中で調べた。ポリグルタミン酸ナトリウム水溶液に二価アミンならびに水溶性イミドを添加して1日静置すると寒天状のゲルが得られ,同ゲルはきわめて膨潤性に富んでいた。このゲルは,ヒトの血しょう成分とほぼ等しい無機イオン濃度を持つ水溶液(擬似体液,SBF)中に7日間浸漬されると,表面にカルシウムとリンからなる化合物を少量形成した。これに対し,同ゲルを予め10mmol/L以上の塩化カルシウム水溶液で処理すれば,SBF中で3日以内にアパタイトが形成され,カルシウム塩水溶液処理によりアパタイト形成能が向上した。前年度で研究を行った植物由来ポリペプチドは,SBFの1.5倍のイオン濃度を有する水溶液でのみアパタイトを形成し,しかも,アパタイト形成に必要なカルシウム水溶液処理濃度はポリグルタミン酸よりも高かった。 以上の結果は,ポリグルタミン酸ゲルが,植物由来ポリペプチドに比べて,より低濃度のカルシウムイオンの導入,よりイオン濃度の低い水溶液環境下でもアパタイトを短期間に生成することを示している。従って,カルボキシル基の含有量が,ポリペプチド表面でのアパタイト形成を支配する重要な因子であることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)