Research Abstract |
本研究の目的は、失調性構音障害患者における言語リハビリテーションの効果を実証的に調査し,現実的で妥当な治療目標の設定と,訓練プログラム作成のガイドラインを提案することである. 失調性構音障害における,1)発話運動特徴の明確化,2)発話運動障害の改善および代償機序の仮説設定,3)改善および代償の実証的検討の3段階の研究プロセスを経て,構音障害のリハビリテーションを展開する上での裏付けとなる知見を得たいと考えている,今年度は,昨年度より調査してきた失調性構音障害の発声発語器官の運動と,話しことばの特徴に関する調査を進めた.(1)機能障害レベルの検査として,(1)筋力など発声発語器官の一般的運動機能のチェック,(2)交互反復運動時の動作解析,(3)リズム形成障害の分析を行った.(2)の動作解析では,失調性構音障害患者では,痙性麻痺性構音障害患者と異なり,運動の方向変換時の障害が顕著で,運動の停止,反対方向への運動の開始が円滑に行われないことが確認された.このフェイズの運動の渋滞が,交互反復運動速度の低下の主因と推測された.リズム形成障害検査においては,失調性患者は,予測された以上に,外的刺激にあわせて,運動を行うことが可能であることが示された.自発的運動との差異は,失調性運動障害におけるリズム産生能力の性質を明らかにする上で,興味深い知見となる可能性がある.(2)能力障害レベルの検査としては,(1)一般的な構音検査を用いた話しことばの質的分析と,明瞭度検査(伊藤,今井ら,小澤らの方法)を用いた重症度測定,(2)プロソディ障害検査,(3)話しことば(単語および文レベル)の変動性と被刺激性の検査を実施した.現在,採取したデータを総合的に分析している段階である.同時に,以上の検討結果と,原因疾患の神経学的検査結果より,比較的純粋な失調性構音障害を呈する症例を厳選し,効果測定のための実験的訓練における訓練課題を選定中である.
|