2005 Fiscal Year Annual Research Report
失調性構音障害患者のリハビリテーション効果に関する実証的研究
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16700420
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
小澤 由嗣 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (60280210)
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Keywords | 構音障害 / リハビリテーション / 訓練効果 |
Research Abstract |
本年度は、まず16年度に収集した症例データの分析を進めた。分析結果の特筆点として、失調性構音障害患者における交互反復運動低下の要因に関する知見が挙げられる。失調性構音障害患者では、交互反復運動速度が低下することが一般に知られているが、痙性麻痺性など他のタイプの構音障害患者でも同様に速度低下がみられる。しかし、構音障害のタイプの違いは、構音障害の原因疾患の違いとも関連することから、速度低下の要因はそれぞれ異なることが推察される。データの分析により、失調性構音障害患者では、交互反復運動時の器官自体の運動速度は、健常者に比し速いことが分かった。さらに、交互反復運動時の発語器官の運動範囲は健常者よりも顕著に大きいことも分かった。すなわち、健常者では効率的な交互反復運動のために速度を一定レベル以下に保ち、短距離を往復運動しているのに対し、失調性構音障害患者では、速度の調節が困難で、速度を上昇させ過ぎる結果となっていると考えられた。速度が上昇しすぎた結果、発語器官の制動距離も延長し、それが運動範囲の顕著な拡大につながったと考えられる。この結果は現在、機能訓練に活用しているところである。本年度はさらにコミュニケーション遂行度の測定法の開発と運用方法の検討を行った。従来、リハビリテーションの効果は、セラピストによる他覚的な評価に基づき判定されてきた。しかし、真に患者中心のリハビリテーションを実現するためには、セラピストによる客観的評価基準とともに、患者や患者のコミュニケーション・パートナーによる日常のコミュニケーションの遂行度・満足度の判定が不可欠と考えた。そこで、新たに患者自身の評定をリハ効果基準に付加するために、測定法の検討を行い、実際に患者に運用しその妥当性を検討した。また、リハビリガイドラインの作成のため、妥当な訓練目標の選定と、効果判定のためのプログラムを立案し、実施中である。
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