Research Abstract |
本研究は,日常を元気に生活している独居高齢者が安心して在宅で暮らせるように,家庭内で発生する音や振動を計測することで,家庭内事故などの異常事態を検知する見守りシステムを開発することを目的としている.本年度は,研究の初年度にあたり,生活音収集システムの開発および生活音・振動データの収集,分析を目標に研究を行った. まず日常生活の見守りのための生活音収集システムの設計・開発を行った.音・振動のセンシングには,小型のマイクロフォンセンサを用い,床の音圧計測用と空間の音圧計測用の2種類のものを作成した.そして,マイクロフォンセンサにより計測した信号を8chのセンサ接続装置を介してA/Dコンバータによりコンピュータに蓄積するようにした. 次に開発した音圧収集システムを用いて,若年者を対象に計測実験を1週間被験者宅にて行い生活音データの収集を行った.センサを,玄関,居間,台所,トイレ,寝室,脱衣所の床および壁に設置し,生活の中で発生している床や空間の音を収集した.計測したデータの分析は,プライバシーの問題に配慮し,人間の耳で聞くことはせず,音圧レベル波形の信号処理により行った.その結果,一定時間(期間)の音圧レベルの積分値を蓄積することで,宅内での行動パターンの指標として利用できる可能性があることがわかった.しかし,瞬間的に発生する異常と考えられる音(例えば物を床に落とす等)などの分析については,日常生活上で発生する他の音(ドアを閉めるなど)と区別することが現段階で困難であることがわかり,現在分析手法の検討をしている. さらに,来年度の高齢者実験に向け,システムが有線の場合,配線作業に手間がかかるだけでなく設置場所にも多少の制約がでるため生活音収集システムの無線化について検討したが,ノイズ,セキュリティ,費用などの面で現段階では課題が多いことが判明した.
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