Research Abstract |
本年度は,下腿の筋力トレーニングの一つであるカーフレイズを取り上げ,カーフレイズ中に下腿三頭筋(腓腹筋内側頭;MG,外側頭;LG,ヒラメ筋;SOL)がそれぞれどのような電気的活動,筋酸素動態を取りうるのかを明らかにすることを目的とした.被検者(健康な成人男性5名)は,椅座位姿勢をとり,近赤外分光装置のプローブ,筋電図の電極,ゴニオメータを装着し,20分以上安静にした後,3分間の安静時の測定行った.その後,立位姿勢をとり,2秒間で踵を挙げ2秒間で踵を下げるというスタンディングカーフレイズを20回連続で行った.運動を開始すると,酸素化ヘモグロビンはいずれの筋においても低下し,特に,MGの低下の程度が著しかった.脱酸素化ヘモグロビンは,いずれの筋においても運動開始直後は低下し,その後,MGは急激に増加し,LGは初期値に戻ってそれを保ち,SOLは,減少して最後迄その値を保った.このことは,運動初期の組織の酸素需要が筋によって異なることを示している.組織酸素飽和度の低下は,LGよりMGのほうが大きかった.20回目では,MGで29.4±3.6%,LGで47.9±3.8%,SOLで56.1±4.0%であった.筋血液量は,運動中は,安静時より低下し,いずれの筋においても,運動を開始すると速やかに減少した.MG,LCにおいては,3-4回目の収縮まで急激に低下し,その後徐々に増加していった.一方,SOLにおいては,運動の終盤まで,減少し続けた.筋電図の平均振幅は,MG,LGが運動初期に増加し,その後は一定の値を保った.SOLは,運動中ほとんど変化はみられなかった.平均振幅は,MGが最も大きかった.従って,カーフレイズのような連続的な動的運動についても,協働筋間において,筋酸素動態の差異がみられ,その差は,運動を継続するにつれ顕著になることが明らかになった.
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