2004 Fiscal Year Annual Research Report
暑熱による脳障害の機構解明と改善に有効な薬物の開発
Project/Area Number |
16700478
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
武谷 三恵 久留米大学, 医学部, 助手 (30289433)
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Keywords | 高温 / 中枢神経障害 / 海馬CA1ニューロン / 静止膜電位 / 興奮性シナプス後電位(EPSP) / アデノシン / 興奮性アミノ酸 / 脳保護効果 |
Research Abstract |
(1)Wistar系雄性ラットの海馬スライス標本(厚さ400μm)を用いて、CA1ニューロン活動に対する高温の影響を細胞内記録法により検討した。標本灌流液(人工脳脊髄液)を36℃に維持し、静止膜電位(-67.4±1.2mV)が安定した後、5〜8分間40℃に上昇させると、膜抵抗の減少を伴う過分極電位(3.2±0.8mV)が発生した。この過分極電位は、36℃に戻すと20分程度で回復した。また、同時に記録したSchaffer側枝の電気刺激に誘発される興奮性シナプス後電位(EPSP)は、温度上昇により可逆的に40%程度抑制された。しかし40℃に維持したニューロンでは50〜90分後に、36℃から42℃に上昇させたニューロンでは10分以内に、OmV付近に至る急峻な脱分極電位が起こり、EPSPは完全に消失した。急峻な脱分極電位が発生した後には、灌流液温を36℃に低下させても静止膜電位、EPSPともにほとんど回復しなかった。以上の結果から、(1)シナプス伝達を含めたCA1ニューロンの興奮性は、温度上昇により速やかに抑制されること、(2)40℃を超える高温や40℃の持続により、CA1ニューロンの膜機能に不可逆的な障害が起こることが示唆された。 (2)アデノシンA_1受容体アゴニストであるADAC(adenosine amine congener)のCA1ニューロンに対する影響を、32℃に維持した灌流液中で検討した。ADACは、A_1受容体を介して濃度依存性(0.01〜1μM)にCA1ニューロンに過分極電位を起こし、EPSPをシナプス前性に(興奮性アミノ酸放出の抑制により)抑制することが示唆された。ADACの効果はアデノシンの100分の1に近い低濃度で観察された。これらのデータをふまえ、(1)で観察された高温による障害に対するADACの保護作用の有無を検討する予定である。
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