2004 Fiscal Year Annual Research Report
加速器質量分析放射性炭素年代測定にもとづく古筆切の年代学的研究
Project/Area Number |
16700585
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定研究センター, 助手 (30293690)
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Keywords | 加速器質量分析法 / 放射性炭素年代 / 古筆切 |
Research Abstract |
本研究の目的は,「年代・筆者が推定できない古筆切,もしくは推定はされているが確証がなく疑問や異論のある古筆切について,加速器質量分析法(AMS)による^<14>C年代測定を行うことで,その書写年代,さらには歴史学の史料としての価値を明らかにする」ところにある. そこで本年度は,AMS^<14>C年代測定法が古筆切の年代判定法としてもつ有効性と限界とを明らかにすべく,書跡史学・古文書学の視点から書写された年代の判明している古経典・古筆切の^<14>C年代測定を行った.一方で,測定器の違いによる差異について検討すべく,名古屋大学の有する二台の加速器質量分析計によって同一の資料についてAMS^<14>C年代測定を行った.その結果,古筆切などの和紙資料は,木炭や土器付着炭化物などの考古学資料で問題となるold wood effect・reservoir effectによる年代のずれが小さく,書跡史学的年代とAMS^<14>C年代とがよく一致することが示された.また,異なる測定器によって得られた^<14>C年代の間にも有意な差はないことが示された. その上で,書かれた年代について疑問のある資料について,^<14>C年代測定の視点からの年代判定を試みた.特に,平安末期の年号(1189年)をもちながらも,古文書学の見地から後世に作成された偽文書と考えられていた「源頼朝袖判御教書」については,そのAMS^<14>C年代から,この文書が平安末期ではなく,やはりずっと後世になっての戦国期もしくは近世に書かれた偽文書であることが明らかにされた.しかしながら,戦国期以降のさらにどの時代のものであるかを確定するには,古文書学・自然科学の視点からだけではなく,書跡史学的見地からの検討が必要となることも示された.
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Research Products
(2 results)