2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国国有企業の合併に伴う人員削減と雇用問題の深刻化に関する研究
Project/Area Number |
16700590
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Research Institution | Hiroshima Kokusai Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 康久 広島国際学院大学, 現代社会学部, 講師 (10362302)
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Keywords | 国有企業改革 / 雇用問題 / 人口滞留 / 親族ネットワーク / 社会保障 |
Research Abstract |
本年度の研究では,国有企業改革の進展に伴い雇用問題が深刻化している中国遼寧省の撫順市を対象として,住民の人口移動と滞留の現状について検討したアンケート調査の結果を分析した. アンケート調査では,1940年〜1960年生まれの世代を対象として,本人とその家族に関する情報を収集した.調査結果として以下の点が指摘できる.対象者の中で,雇用や収入に比較的余裕がある階層だけでなく,家族内に失業状態の人を多く抱え込んでいる失業・不安定就業世帯においても,市外への転出者を出している世帯は,全体の1割未満であり,就業条件不利地域での人口の滞留現象が見られる.彼(女)らは,就業条件に比較的恵まれている国内の大都市や海外に転出・移民するための資金や情報,人的ネットワークに乏しいため,撫順市に滞留していると考えられる.彼(女)らの多くは,生活に必要な援助を家族や親族からの援助に頼っており,家族や親族と同居したり,近接して居住したりすることで家計を維持している.また,市外に転出者を出している世帯でも,転出者は比較的収入が少ないインフォーマルな職種でしか就業できないため,彼(女)らから仕送りを受けられる比率は,一般の失業していない世帯より少ない.同市では,失業の再生産と社会階層の固定化が懸念され,雇用保険等の社会保障制度の整備等の対策が必要だと言える. この調査結果は,経済地理学会西南支部例会という研究集会にて口頭発表した.
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