2005 Fiscal Year Annual Research Report
ブータン・ヒマラヤにおける氷河縮小と氷河湖拡大に関する研究
Project/Area Number |
16710010
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
内藤 望 広島工業大学, 環境学部, 講師 (90368762)
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Keywords | 氷河縮小 / 氷河湖拡大 / ブータン・ヒマラヤ / 氷河表面低下速度 / 氷河末端後退 / 夏期涵養 / 人工衛星画像 / 現地観測 |
Research Abstract |
ブータン・ヒマラヤのジチュダモ氷河周辺において1998年以来蓄積してきた観測データを整理・解析し、この地域の氷河変動と気候状態についてとりまとめ、査読論文として発表した。その主な成果は、まずジチュダモ氷河周辺における年間降水量は1500mmを越え、その大半が夏期に集中していることが確認できた。またジチュダモ氷河下流部では2〜3m/年の速さで氷河表面が低下するとともに、氷河末端位置は約8m/年の速さで後退していることが判明した。特にこの氷河表面低下速度については、ブータン・ヒマラヤにおける初の定量的観測例であり、従来ネパールで観測されてきた氷河表面低下速度に比しても速い部類に属する。これはヒマラヤの氷河の特徴である夏期涵養という質量収支特性がブータンにおいて際だって強くなっていることから、温暖化に対する氷河の融解・縮小がブータン・ヒマラヤにおいてより急速に進行していることを示唆する結果と言える。さらに1980年代に撮影された写真との比較によって、ジチュダモ氷河周辺の多数の氷河において顕著な末端後退が確認できた。これらのことから、ヒマラヤ地域における氷河変動傾向を把握する上で、ブータン・ヒマラヤにおける研究の重要度はかなり高いものと考えられた。 また1967年2月に撮影された米国のCORONA衛星画像7シーンを購入し、ブータン・ヒマラヤ中東部マンデ川流域における7氷河湖の面積拡大速度を算出した。昨年度に解析した西部の4氷河湖と同様、その拡大速度は、ネパールやブータンで特に氷河湖決壊洪水(GLOF)が危惧されているような氷河湖と比べて1桁以上も小さいものであった。ヒマラヤの氷河湖においてGLOFの危険度を正当に評価するためにはこういった拡大速度の情報も重要であるため、対象とする氷河湖・地域をさらに拡張していく必要があろう。 さらに2002〜2004年にブータン・ヒマラヤのルゲ氷河およびトルトミ氷河において実施してきた、氷河・氷河湖変動に関わる現地調査のデータ解析の結果から導き出された、氷河湖拡大と氷河縮小との間の正のフィードバック効果について、中国蘭州で開催された国際学会にて口頭発表を行った。
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[Journal Article] Topographical survey of July 1st Glacier in Qilian Mountains, China2006
Author(s)
K.Fujita, A.Sakai, Y.Matsuda, C.Narama, N.Naito, S.Yamaguchi, K.Hiyama, J.Pu, T.Yao, M.Nakawo
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Journal Title
Bulletin of Glaciological Research Vol.23
Pages: 63-67