2005 Fiscal Year Annual Research Report
ダムによる有機物フローの遮断が流域炭素循環と生物多様性に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
16710016
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岩田 智也 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助手 (50362075)
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Keywords | ダム / 流域 / 炭素循環 / 安定同位体 / 温室効果ガスフラックス / 河川食物網 / 陸上有機物 / 腐食連鎖 |
Research Abstract |
昨年度と同様に、山梨県北杜市のダム湖とその流入出河川で炭素フラックスを定量化し,ダムによる流域炭素循環の変化を明らかにした.さらに、炭素・窒素安定同位体分析を用いてダム上下流の河川食物網の違いを明らかにした。 4〜12月に各河川とダム湖内で粒状有機炭素・溶存有機炭素・溶存無機炭素の流下量およびCO_2・CH_4の大気への放出量(kgC/day)を毎月測定した.また、湖内では動植物プランクトン、流入出河川では底生無脊椎動物を採集し、安定同位体比を測定した。その結果,ダム下流では陸上有機物の流下量が大きく減少していることが確かめられた.また,11-12月には湖へ粒状有機物が大量に流入し蓄積していたが、その多くは陸上起源であることも示された。このようなダムによる流下有機物の遮断によって、下流の食物網では腐食連鎖が大きく縮小していた。安定同位体分析による食物網解析の結果、ダム下流では陸上有機物を起点とし破砕食生物や採集食生物に至る炭素流量が大きく減少していた。一方で、ダム湖から放水される植物プランクトンを起点とする炭素が下流の食物網内を流れており、腐食連鎖の縮小による負の影響は植物プランクトンによる補償によって抑えられていた。一方、ダム湖内からは、温室効果ガスの大気への放出が認められ、年間放出量はCO_2で4.3±1.1ton C、CH_4で0.30±0.05 ton Cと推定された.これら気体の起源は湖に堆積した陸上有機物と考えられたが、CH_4は動物プランクトンの腸管内からも放出されていると考えられた。また、ガス放出量の季節変動と動植物プランクトンのダイナミクスとの関係も認められた。次年度は,既に採集しているサンプルを分析することで、河川食物網の季節変化をダム上下流でより詳細に調べるとともに、ダム湖内の温室効果気体の生成・循環過程についても室内実験によって明らかにしていく予定である.
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