2005 Fiscal Year Annual Research Report
イトヨ雄特異タンパク(スピギン)を指標にした環境アンドロジェン評価法の開発
Project/Area Number |
16710033
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
長江 真樹 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (00315227)
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Keywords | スピギン / イトヨ / 環境アンドロジェン / バイオマーカー |
Research Abstract |
イトヨ(Gasterosteus aculeatus)は繁殖期に営巣するという特殊な生態を示す硬骨魚類であり、雄は巣を作る際に弾力性に富んだ不溶性の接着タンパクを合成および分泌することが古くから知られていた。近年、その接着タンパクが男性ホルモンの刺激によって腎臓で特異的に合成される「スピギン」という分子から成ることが明らかとなった。そこで本研究では、男性ホルモンによってその合成が強く支配されているこの「スピギン」分子に着目し、本分子をバイオマーカーに用いた男性ホルモン様作用評価システムの開発を行い、様々な化学物質の男性ホルモン様作用を明らかにすることを目的とする。 昨年度、スピギン遺伝子のゲノム配列解析(エクソン-イントロン構造解析)を経て、スピギンmRNA量を測定可能なリアルタイムPCR測定系を確立した。本年度はまず、本測定系の感度と精度について検討した。イトヨ雌に10^1〜10^<-6>μg/Lの濃度でメチルテストステロンを一週間曝露し、腎臓のスピギンmRNA量を測定した。その結果、10^<-2>μg/L(10ppt)と極めて低濃度の曝露においても、そのホルモン作用をバイオマーカーの増加として検出可能であった。また、同一個体の測定値のばらつきも小さく、本測定系の精度が高いことも窺えた。抗アンドロゲン剤であるフルタミドを上述と同様の曝露試験に添加したところ、スピギンmRNA濃度の低下もしくは消失が認められたことから、本試験法は外因性物質の男性ホルモン作用および抗男性ホルモン作用の両方を検出可能であることが明らかとなった。本年度、実際の河川および河口域で採取した水試料を用いた曝露試験を予定していたが、イトヨ個体が入手できなかったため、実施を見送った。今後、化学物質による汚染が進行していると予想される河川の水試料を用いた曝露試験を早急に実施する予定である。
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