2004 Fiscal Year Annual Research Report
電離放射線の誘導する次世代マウスのゲノム不安定性についての解析
Project/Area Number |
16710036
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
白石 一乗 大阪府立大学, 先端科学研究所, 助手 (40347513)
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Keywords | 放射線 / マウス / 次世代影響 / 復帰突然変異 |
Research Abstract |
研究はマウスを使った実験で、放射線が直接的に突然変異を誘発する意外にゲノム不安定性を誘導し、これが2次的に突然変異を誘発する可能性を検証した。突然変異の指標にはメラニン合成系に関与するpink-eyed dilution (P)遺伝子を用いた。メラニン合成系に関わるP遺伝子の変異はマウス個体の体毛および網膜上皮色素細胞を淡色化させるが、pink-eyed unstable (pun)変異はP遺伝子の部分的重複によって生じるため、発生過程での相同組み換えにより野生型に復帰する。この復帰突然変異の生じた個体では体毛や網膜上皮色素細胞の一部が黒色化するため、突然変異が容易に判定できる。一方、同じP遺伝子の変異であるpink-eyed Jackson (pJ)変異は遺伝子欠損による変異のため野生型に復帰できない。実験ではpJ変異を持つ雄マウスにX線を照射し、pun変異を持つ雌マウスと交配する。生まれたF1マウスの網膜上皮色素細胞での黒色化した細胞数を求めることで、直接照射を受けていないpun遺伝子座の組み替え頻度を求めることができる。実験の結果、照射を受けた雄マウスから生まれた次世代マウスでは父親由来の遺伝子座のみならず、照射を受けていない雌由来の遺伝子座においても突然変異頻度上昇が観察された。さらに、DNA損傷は精子に由来するものであるのに、その変異は体細胞中で生じていることも示された。これらの知見から、照射精子が卵子にDNA損傷を持ち込むことで、受精卵内でゲノム不安定性を誘発し、これが雌由来の非照射ゲノムに作用して次世代での非標的突然変異を引き起こすことが明らかにされた。
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