2004 Fiscal Year Annual Research Report
重イオンマイクロビーム装置をもちいたバイスタンダー効果の分子生物学的解析
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16710039
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
舟山 知夫 特殊法人日本原子力研究所, イオンビーム生物応用研究部, 研究員 (40354956)
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Keywords | 低線量放射線応答 / バイスタンダー効果 / 重イオン / マイクロビーム / DNA修復 |
Research Abstract |
低線量放射線が生物に与える影響の正確な評価のためには、生物が極めて低い線量の放射線に応答する分子生物学的メカニズムを解明する必要がある。低線量放射線応答機構としては、放射線適応応答をはじめとする様々な事象が報告されているが、放射線の離散的エネルギー付与の性質が無視できなくなる極めて低線量の領域ではバイスタンダー効果の寄与が重要になる。 そこで、バイスタンダー効果の分子機構の解明をおこなうために、バイスタンダー効果を容易に解析できるモデル実験系の構築を行った。重イオンマイクロビーム装置は、生物試料中の限定された細胞のみに放射線を照射することができるため、バイスタンダー効果解析実験系を容易に構築できる。今年度は、重イオンビーム照射後のバイスタンダー効果の解析を容易に行うことができる、DNA修復タンパク質細胞内分布の加5吻染色法をもちいた可視化技法の確立を行った。 照射容器中に播種したチャイニーズハムスター細胞の総数の1%に選択的に重イオンビームを標的照射し、照射後、DNA損傷生成の指標とされるピストンH2AXのリン酸化部位のinsitu免疫蛍光染色法による可視化を行った。可視化後、リン酸化H2AX陽性の細胞頻度を計測したところ、リン酸化H2AX陽性細胞の頻度は、全体の1%の細胞の照射によって3-5%の上昇を示した。この結果から、重イオンマイクロビーム照射による細胞のDNA損傷生成のバイスタンダー効果の存在が示唆された。併せて、マイクロビーム装置の照準照射精度の向上のためのシステム改良も推進し、従来と比較し1/10以下の誤差精度での細胞の標的照射を実現した。
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