2006 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線によるDNA2本鎖切断に対する修復タンパク質の応答機構
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16710040
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Research Institution | Central Research Institute of Electric Power Industry |
Principal Investigator |
冨田 雅典 (財)電力中央研究所, 原子力技術研究所, 特別契約研究員 (00360595)
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Keywords | 重粒子線 / DNA2本鎖切断 / DNA-PK / NBS1 / ATM / 放射線影響 |
Research Abstract |
DNA2本鎖切断(DSB)修復機構の細胞周期依存性の解析 DNA2本鎖切断(DSB)の修復は、細胞周期と密接して行われる。相同組換え修復(Homologous recombination : HR)は姉妹染色分体を鋳型として修復するため、姉妹染色分体が存在するS/G2期のみで起こるが、非相同末端結合(Non-homologous end-joining : NHEJ)は、すべての細胞周期で起こる。HRにおいて重要なナイミーヘン症候群(NBS)の原因遺伝子産物Nbslを欠損したヒトNBS患者由来細胞を用いた検討から、重粒子線による重篤なDSBは、HRにより効率的に修復できない可能性を報告した。 重粒子線照射後の細胞周期分布の変化を解析するため、NBS細胞とNBS1 cDNAを導入したNBS細胞を、フローサイトメーターを用いて解析したところ、いずれもG2期からM期への進行が顕著に抑制された。この結果から、損傷が重篤なためにNBS1の有無にかかわらずHRによる修復ができず、細胞周期の進行が抑制されることが明らかとなった。 細胞周期と細胞生存率の関係を調べるために、G1/S期境界に同調したHeLa細胞を用い、コロニー形成法により生存率の変化を解析した。その結果、非同調の細胞に比べて高い致死効果が得られた。以上の結果から、G2期で細胞周期進行を抑制し、細胞死を積極的に誘導する過程が明らかになった。 次に、シグナル伝達機構を解明するため、細胞周期チェックポイント関連タンパク質Chk2のリン酸化を、ウェスタンブロット法により解析した結果、X線を照射した場合に比べて、リン酸化が顕著に抑制されていることを見出した。よって、NBS1依存的なリン酸化シグナル伝達機構が活性化せず、Chk2のリン酸化が抑制されるために、G2期からの進行が抑制されることが示唆された。
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