2004 Fiscal Year Annual Research Report
原子直視型複合型顕微鏡法によるカーボンナノチューブ合成と物性解析法
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16710062
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安坂 幸師 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助手 (50361316)
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Keywords | 高分解能透過電子顕微鏡 / その場動的観察 / カーボンナノチューブ / 力学特性 / 電気伝導特性 / 引張り変形 / 接合 / 原子直視観察 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブは、優れた力学特性および特異な電気伝導特性を有することが理論計算などから示唆されている。本研究では、原子直視型複合型顕微鏡内部で、一本の孤立したカーボンナノチューブを作製し、その場で変形させ、そのときの構造と物性の変化に注目し、実験を行った。変形実験では、顕微鏡内でピエゾ駆動により微小素材の変形を原子レベルで制御する方法を用いた. 本年度は、カーボンナノチューブの中でも、特に単層カーボンナノチューブの作製条件を系統的に調べ、作製方法を確立した。試料として、表面に金属を蒸着した原子間力顕微鏡用カンチレバーチップと、先端を十数ナノメートル厚さに薄膜化したアモルファスカーボン基板を用いた。まず、顕微鏡内で、カンチレバーと基板の間に電圧を印加し、両者の先端をピエゾ駆動により接触させた後、引き離す。このとき両先端の表面は、グラファイトで覆われる。グラファイト化した両表面を再び接触させると、カンチレバーと試料の間に、単層カーボンナノチューブを作製することができる。このように作製した単層カーボンナノチューブをその場で引張り変形し、その変形過程を原子レベルで動的に観察すると同時に力学特性値を測定した。その結果、単層カーボンナノチューブを長軸方向に引張ると、座屈によりチューブのほぼ中央部にくびれが形成され、さらに引張るとくびれが細くなり破断することが明らかになった。破断した単層カーボンナノチューブの先端形状は閉殻構造であることが判明した。こうした単層カーボンナノチューブのくびれ形成については、Stone-Wales転移反応に起因して生じることが提案されている。さらに、完全に破断した単層カーボンナノチューブの先端同士を、電圧を印加させながら接触させると、両チューブの先端表面層は、完全に開いて接合し、一本の孤立した単層カーボンナノチューブに回復することが明らかになった。
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