2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造における量子化熱伝導度のブレイクダウンと低温領域での新たな量子化現象
Project/Area Number |
16710097
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 之博 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00281791)
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Keywords | ナノ構造 / 量子細線 / 量子化熱伝導度 / 散乱行列法 / フォノン / 周期構造 / 透過率 / ランダウア公式 |
Research Abstract |
研究初年度である本年度は、まず、ナノ量子細線における熱伝導度の形状依存性を調べるために、縦波に対して、スカラー波近似を用いて三次元の弾性波動方程式を一次元問題に帰着させ、散乱行列法によって透過率を計算し、ランダウア公式を用いて熱伝導度の解析を行った。この近似においては、縦波と横波のカップリングを無視することになるが、細線の形状変化を正確に取り入れることができ、縦波の励起モードも考慮することができる。最近の実験を想定した系において、我々は、量子化熱伝導度が3つの長さスケールによって特徴づけられることを明らかにした。その3つの長さとは、量子細線の長さ、量子細線の幅(すなわち閉じ込めの幅)、そして振動数ゼロのフォノンがもつ共鳴効果に起因する長さである。温度に対応して熱伝導に支配的に寄与するフォノンの波長が決まるが、その波長が量子細線の幅よりも大きくなる(温度が低くなる)と、一次元細線の特徴である熱伝導度の量子化が現れる。フォノンの波長が量子細線の長さと同程度になる(さらに低温になる)と、透過率の落ち込みに伴い量子化のブレイクダウンが引き起こされる。さらにフォノンの波長が大きくなり、振動数ゼロのフォノンの共鳴効果が現れると、透過率が再び1に回復し、量子化熱伝導度が復元することを見いだした。しかし、縦波の励起モードを考慮しても熱伝導度に階段構造は現れなかった。そこで我々は、量子細線の形状に周期構造(幅の狭い部分と広い部分が周期的に繰り返された構造)を導入した。この系において、低温で周波数ギャップによるフォノン透過率の落ち込みと、周期構造に起因するフォノンの共鳴効果(透過率における振動)による透過率の落ち込みの2重の効果によって引き起こされる、熱伝導度における新たな階段構造を見いだした。このステップの大きさは、狭い部分と広い部分の比が大きくなればなるほど大きくなることを明らかにした。
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