2005 Fiscal Year Annual Research Report
大規模な意思決定機関における投票と提携形成行動について
Project/Area Number |
16710106
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小野 理恵 千葉大学, 法経学部, 助教授 (40283056)
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Keywords | 投票ゲーム / 投票力指数 / 重みつき多数決ゲーム / 提携形成 / 拒否権 |
Research Abstract |
本年度は10月に育児休暇から復帰したため、中断前の平成16年度の前半に引き続いて、大規模なシステムを評価する場合に起こる投票力指数による差異について検討を行なった。対象とする投票力指数はShapley-Shubik指数、Banzhaf指数、Deegan-Packel指数、Holler-Packel指数を用い、特に国連の常任理事国と非常任理事国のように、拒否権を持つ投票者とそうでない投票者がいるようなシステムでの評価の差が、指数によってどのように異なるかを調べ、これが感覚的に考えている「投票力」とどのくらい相違があるかについて考察を行なった。この4指数は、全般的には似たような指数と考えられているが、例えば後の2つに関しては、重み付き多数決ゲームで1人の投票者の重み(政党の議席数とも考えられる)を増やした場合に指数の大小関係が逆転することがあることなど、細かな性質は異なっていることが指摘されている。本研究では特に拒否権をもたない投票者の数を増やしていくことでどのように投票力の分布が変化するかを調べているが、Shapley-Shubik指数やBanzhaf指数では拒否権をもたない投票者全体の投票力が0に近づいていって事実上拒否権を持つ投票者の独裁になっていくのに対し、Deegan-Packel指数やHoller-Packel指数ではその値は一定になることがわかる。もともと考え方にかなり差異があると考えられている4指数だが、実際の計算の上でもそれが顕著に現れることを示す一つの例であるといえる。本結果は本年度に結果を報告することができなかったので、公表および更なる発展については次年度に行なう予定である。 本研究ではもう一つ大きなテーマとして提携形成行動と分裂行動を含めたモデルの構築を目標としている。近年提携形成に関するモデルの試みが活発になっているが、そのアプローチは多方面に渡り、そのうちの一部には基本的な考え方がほぼ同じものがあることも事実である。本年度はそれらの資料を収集しまとめている段階であり、現段階では興味のある結果は得られていない。このテーマは次年度の主要テーマとして研究を続けていく予定である。
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