2004 Fiscal Year Annual Research Report
最適停止問題における複合評価系とその数理ファイナンスへの応用
Project/Area Number |
16710117
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
津留崎 和義 長崎大学, 経済学部, 助教授 (50336145)
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Keywords | 最適停止問題 / 複合評価系 / 動的計画法 / 普遍埋没原理 / マルコフ過程 / 2項過程モデル / アメリカン・オプション |
Research Abstract |
Chow, Robbins and Siegmund [1971]を始めとする最適停止問題に関する理論的研究は、その評価系として単一評価系、とりわけ加法型評価を取り扱ったものがほとんどであった。また、この分野の研究も近年では目新しい成果を得ているとは言い難い。他方、数理ファイナンス、特にオプション・プライシングに関する研究が最近盛んに行われている。満期日が定まっておらず、権利行使期間内であればいつでも行使可能なアメリカン・オプションに対して、その基礎モデルとして2項過程モデルが取り上げられているが、このモデルはその定式化において最適停止問題そのものである。種々のアメリカン・オプションが創出されているにもかかわらず、上述の最適停止理論の制約により、2項過程モデルによる解析は十分になされているとは言い難い状況である。 本年度の研究実績として、最適停止問題における複合評価系、その手始めとして範囲型評価を導入した。範囲型評価とは最大値と最小値との差でパスを評価するものであり、最近注目されている天候デリバティブに対して、気温や降水量などの新たな尺度となり得るものである。一般に、最適停止問題の解析手法としては動的計画法が用いられるが、複合評価系の問題に対しては直接的に動的計画法を適用することができない。そこで、当該研究においては、まず普遍埋没原理により原問題に対してパラメータを導入することによって状態空間を拡大し、そのパラメータ、および拡大状態空間上の新たなマルコフ過程に対して最適方程式を導出する。そこで得られた最適解から原問題の最適解を再構築している。
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