2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16710129
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山崎 栄一 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (00352360)
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Keywords | 自然災害 / 災害復興 / 被災者支援 / 公共政策 / 憲法 / 行政法 / 災害法制 / 法政策学 |
Research Abstract |
本年度は、被災者支援法システムの中でも国・自治体による公助の仕組みを分析していった。平成16年度は被災者支援のあり方が大きく変容していった年であった。まず、平成16年4月より被災者生活再建支援法を改正するという形で居住安定支援制度が創設された。新制度の分析と運用に関する実態調査を行った。初の適用事例は、佐賀県突風災害(平成16年6月27日)であり、山崎自身が現地調査を行っている。そこでは、(1)従来の制度が地震と風水害を想定していたために、適切な被害判定がなされなかった、(2)新制度の適用対象・範囲の狭小さが浮き彫りにされた。 本年度はまれに見る多数の自然災害に見舞われた。それに対応して、自治体が法律の枠を超えた独自施策を講じるケースが多く見たれた。自治体が独自の施策をとるに至った背景を分析してみると、(1)災害救助法・被災者生活再建支援法を主とする国の施策があまりにも貧弱であること、(2)大規模でショッキングな災害の発生により、自治体も何らかの施策を求められていること、があげられる。自治体の自助努力が見られる場面は、特に被災者生活再建支援法の不備を補おうとする場面において顕著であった。 被災者支援(特に住宅再建支援について)の政策理念について、個人補償論からの脱却を試みた。というのも、個人補償が可能なのかという議論は、結局の所、「財産重視・持ち家重視」という偏った視点に立った被災者支援システムを構築する要因となっている。また、個人補償すれすれの制度設計をするがゆえに、制度全体がゆがんだフォームをしている。そこで、単に個人の財産に対する支援ではなく、コミュニティー空間あるいはシティズンシップという個人を超えた利益の維持・確保を政策理念として再設定することが有用である。被災者支援のあり方について、憲法論的に言えば、生存権的要素を含んだ財産権保障からのアプローチをおこなった。 自立支援金訴訟後の調停事件においては、民法上の財団法人である阪神・淡路大震災復興基金に対して、自立支援金の分配につきどこまで公平・平等な取扱いが法的に要請されるのかが問題とされた。この調停事件は、現在、訴訟に発展しているので、さらなる観察が必要である。被災者支援の領域で、どこまで司法的な介入が行われるか注目をしていきたい。
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Research Products
(3 results)