Research Abstract |
本研究では,まず京都府城陽市南部を北流する木津川の支流である青谷川中流部の天井川化した河川堤防を研究対象として地盤調査を行った.次に,地震時の盛土の基礎的な動的変形挙動を調べるため,液状化の可能性のある砂質地盤上の盛土について遠心模型実験を行った 調査対象とした河川堤防の比高は約20mである.まず堤防上で標準貫入試験,PS検層及び試料サンプリングを行い,天井川化した堤防の基本的な物性を把握した.この結果堤体はN値20から30程度の礫混じり砂からなり,地下水位が堤体天端から約5.5m付近にあることがわかった.標準貫入試験は天端から堤体の高さである深度20mまで行ったが,最深部において粘土層が確認された.この結果,当該地点の堤防は,粘土質の原地盤上に上流部に存する風化花崗岩の砂礫を盛って造成されてきたものと推定される.このことは,既往の文献(井手町史シリーズ,井手町史編集委員会)の記述と矛盾しない.地下水位は高いが,堤体を構成する土質構成とN値から,大地震時に液状化が発生し堤体が崩壊する可能性は低いといえるがその可能性は否定できない. 本遠心模型実験に用いた盛土は,飽和砂質地盤上に造成された乾燥砂からなる盛土である.したがって,先に現地調査を行った河川堤防の条件とは異なる.これは,まず単純な条件を仮定し,盛土の基礎的な変形特性を把握することを目的としたためである.現地調査を行った堤防上には水が流れており,その水が堤体内部に浸透しているものと推測されるが,これを遠心模型実験で再現するためには,遠心力を載荷しても堤防上に常に水が供給される仕組みを有する特別な実験装置が必要となる.本研究では,下部地盤の密度と入力加速度を変化させて実験を行い,堤体天端の沈下量と入力加速度振幅の関係を求め,その力学的なメカニズムに関して以下のような知見を得た.すなわち,一般に飽和砂地盤上の盛土構造物においては,液状化発生前に堤体に作用する慣性力によって飽和地盤中のせん断応力が増加するため,盛土の周囲,特に盛土直下の浅部地盤では液状化に対する見かけの強度が大きくなる.この非液状化領域は,慣性力の増加とともに大きくなる傾向にあるので,それがくさびとなり液状化の進行とともに周囲の液状化地盤中に貫入する.この破壊メカニズムは,本研究で対象とした天井川堤防の破壊形態と入力加速度振幅の関係にも適用することが可能である
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