2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム構造比較と遺伝子系統解析による進化機構の基礎的研究
Project/Area Number |
16710144
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
足立 淳 統計数理研究所, 予測制御研究系, 助教授 (30370092)
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Keywords | 分子進化 / 分子系統樹 / ゲノム構造 / 遺伝子 |
Research Abstract |
相同な遺伝子の系統関係と、ゲノム上での遺伝子の位置関係から、種間におけるゲノム構造の変異の歴史的順番を数値的最適化の手法を適用することによって解明することが目的である。 今年度は主に遺伝子の系統関係を推定する方法の開発とそのソフトウェアの構築を行った。具体的には、最尤法による系統樹推定方法をオーソログな関係の遺伝子のみならず、パラローガスな遺伝子も含めて、遺伝子ファミリーの系統関係を推定できるように拡張した。次に、現在入手可能なヒト、マウスとラットのcDNAとゲノムのデータを整理し、以下のステップの(1)と(2)を中心にソフトウェアのプロトタイプを開発した。 (1)遺伝子とゲノムのマッピング 既知の遺伝子や転写物(cDNA)とゲノム配列を比較し相同性がある部分を切り出す。 (2)遺伝子ファミリーの系統関係の推定 重複した遺伝子の機能の変化や消失に起因する進化速度の変化に対応した、最尤法による分子系統樹推定法を新たに開発する。そして互いに相同性がある配列の系統関係を推定する。 (3)ゲノム構造の変異の歴史を復元 遺伝子の系統関係とゲノム上での互いの位置関係から、ゲノム構造の種間差異を説明できる変異の順番を数値的最適化の手法によって推定する。部分的重複の歴史の推定結果は、(2)の系統関係の推定結果と矛盾することが起こりえる。そのときは互いに矛盾が無くなるになるように、それぞれの方法を改良し、矛盾が最小になるように収束させる。 分子系統学とゲノム比較を組み合わせることによって、ある遺伝子の進化の引き金となった突然変異が、ゲノム上で何時どのように起こったかを推定し、個々の突然変異が定着してきた歴史を解明することが次年度以降の目標である。
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