2004 Fiscal Year Annual Research Report
十字架型DNAを利用した安全な遺伝子治療ベクターの開発
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16710148
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
稲垣 秀人 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助手 (70308849)
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Keywords | パリンドローム / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
ヒトの転座切断点で見つかったPATRR配列は、パリンドローム構造のためクローン化が難しい。本年度はそのクローニングを試みたが、22番染色体のPATRRはまだ成功しない。そのため、22番PATRRは転座した分子から半分ずつ取り出し、それをつなぎ合わせることで模造する方法を取った。この人工22PATRRを、すでにクローン化した11,17番染色体のPATRRと合わせて実験に使うこととした。次に、ヒトの各種培養細胞を用いて、培養温度を下げて精巣の条件に近づけ、培養細胞と精巣で検出される染色体間の転座の頻度を比較した。その結果、培養細胞では自然に発生する転座を検出することができなかった。さらに、クローン化したDNAと染色体間の転座頻度も同様に検出を試みたが、やはり検出限界以下であった。このことから、体細胞にDNAを導入するためには、何らかの因子を足してやる必要があることが明らかになった。この機構の解明は今後の研究にかかっているが、逆に狙った細胞のみに導入するという安全性を高めるため目的には必要な条件である。また、17番PATRRのクローン化に際し、複数の健常人の多型を解析したところ、PATRRのパリンドローム構造を保持するものと、欠失して対称性を欠いたalleleが約半分の割合で検出された。ヒトのNF1発症例の2例でPATRRを介した転座が原因の患者が報告されているが、それらはいずれも対称性を保持したallele由来であった。このことから、対称なPATRRほど十字構造をとりやすく、そのためヌクレアーゼなどに攻撃を受け二重鎖切断を誘発し、転座の切断点となることが推測された。この成果は第27回日本分子生物学会年会で発表し、また現在論文としてまとめ投稿中である。
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