2004 Fiscal Year Annual Research Report
DNA合成酵素新規分子種選択的阻害物質の探索・分子設計とケミカルノックアウト解析
Project/Area Number |
16710161
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
水品 善之 神戸学院大学, 栄養学部, 助教授 (20307705)
|
Keywords | DNAポリメラーゼ / 酵素特異的阻害剤 / ジペプチドアルコール / L-homoserylaminoethanol / L-aspartatylaminoethanol / クルクミン / ケミカルノックアウト / 分子設計 |
Research Abstract |
タバコ培養細胞のメタノール抽出液にDNA合成酵素ε(DNAポリメラーゼε、polε)選択的阻害活性があったので、4本のイオン交換カラムクロマトグラフィーを用いて、阻害物質を完全精製した。 1.polε選択的阻害物質、L-homoserylaminoethanol 完全精製された物質の構造解析(NMR,MS)を行った結果、本物質は新規のジペプチドアルコール、L-homoserylaminoethanol (L-Hse-Gly-ol)であった。哺乳動物由来のpolのうち、特にpolεを選択的に阻害した(IC_<50>=43.6μg/ml)。本物質の天然型であるL-体と非天然型のD-体を化学合成して、天然物と阻害の強さ及び酵素選択性を調査した結果、合成品は天然物と同様にpolεを選択的に阻害した(IC_<50>:L-体42.0μg/ml、D-体41.5μg/ml)。本物質は、ヒト由来だけでなく、ショウジョウバエ由来ならびに出芽酵母由来のpolεを阻害した。また、kinetics解析から本物質の阻害様式は鋳型DNA及びヌクレオチドに対して非拮抗阻害であった。 2.polα選択的阻害物質、L-aspartatylaminoehanol ジペプチドアルコールのアミノ酸部分を変換した各種化合物30種類以上を化学合成して、pol分子種に対する選択性を調査した。その結果、L-aspartatylaminoethanol (L-Asp-Gly-ol)がpolαを最も強く阻害することを見出した(IC_<50>11.5μg/ml)。polα阻害に必須なジペプチドアルコールの構造は次の(1)〜(4)のとおりであると考察できた。今後の分子設計に役立つ情報を提供することができた。(1).N端は遊離のアミノ基である (2).C端はカルボキシル基が望ましい (3).炭素数は5〜6で直鎖である (4).L-体・D-体はどちらでもよい その他、近年発見された新規なpolであるpolλは、核のDNA修復と組換えを担っていると考えられている。カレー粉やたくあんの黄色色素であるフェノール化合物「クルクミン」がpolλだけを特異的に阻害することを見出した。クルクミンには抗酸化活性の他にも血管新生抑制活性や抗炎症活性などが知られている。polλがこれらの活性に関与していることが示唆されて興味深い。
|