2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代イギリス移民政策をめぐる議論に見るブリティッシュネス概念の変容
Project/Area Number |
16710170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浜井 祐三子 北海道大学, 言語文化部, 助教授 (90313171)
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Keywords | イギリス / 現代史 / ナショナル・アイデンティティ / 移民 |
Research Abstract |
本研究では、第二次世界大戦後のイギリスへの旧植民地諸地域からの移民流入により生じた多「人種」・多文化化に伴うブリティッシュネス概念の変容について、政治的言説やマスメディアの言説の分析を通じて明らかにすることを目的としている。1年目の研究の成果として、以下のようなことがわかった。 イギリス政府は移民流入への世論の反発に後押しされる形で、1962年、それまでの植民地や英連邦の住民を含む全ての「イギリス臣民」に自由な入国を保障する入国管理制度を廃止し、入国希望者のパスポートの発行元によって入国管理を行う制度を同年の英連邦移民法によって導入した。しかし、その結果、1960年代後半から1970年代前半にかけて、イギリス連合王国政府発行のパスポートを保持し、本来的にはイギリスへの自由な入国が保障されているはずの(つまり1962年英連邦移民法によって流入を阻止できない)東アフリカ諸国からのアジア系住民の流入問題に直面した。政府はイギリス帝国支配の責任論、国際社会での人道主義的・国際法的見地からの非難と、移民流入の増加に危機感を募らせる国民世論との板ばさみとなり、結果、国民世論に配慮する形で1968および1971年の相次ぐ移民法改正に踏み切ることとなったが、1972年のウガンダ難民危機のような事例においては、イギリス連合王国政府発行のパスポートを所有するアジア系住民に対し自由な入国を拒否するという措置は国際的には許容されない要因を含んでいることを広く自覚させる結果となったといえる。
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