2005 Fiscal Year Annual Research Report
性別職域分離の維持と変容のメカニズムに関する社会学的研究
Project/Area Number |
16710187
|
Research Institution | Nara Saho College |
Principal Investigator |
中田 奈月 奈良佐保短期大学, 幼児教育科, 講師 (10369746)
|
Keywords | 性別職域分離 / 保育士 / 家庭 / 女性職 / 性別役割分業 |
Research Abstract |
本研究は、男性が保育職に参入する場面に着目し、女性職を「女性職」たらしめるものを追求し、性別職域分離の改善に向けて新たな提言を行うものである。保育職を「女性職」たらしめているものは何か。研究者はこれまでの研究蓄積から、保育職を「保育職」たらしめているのは「保育職」=「家事育児継承職」=「女性職」という認識枠組であると考える。その認識枠組みの背後に「保育の場」=「家庭」という認識枠組が見え隠れする。この認識枠組を形成するものは何か。「保育職」=「女性職」という認識枠組の維持と変容を解析するため、本年は男性保育者への面接調査を行うとともに、保育士養成校の男女学生(男性80名女性125名)に量的調査を実施した。 量的調査の分析の結果、学生には「保育職」=「家事育児継承職」=「女性職」という認識枠組が存在していないことが分かった。保育者をめざす学生にとって「保育職」は「家事育児継承職」ではあるが「女性職」ではない。彼らは保育者を親代わりであると素朴に考え、男性は家庭における父親役割、女性は母親役割を果たす者とみなす(男性46%女性60%)。また、約半数が、性別によって保育者役割に違いがあると考え、その比率は男性のほうが若干高い(男性56%女43%)。 以上のことから、変化したのは「保育職」=「女性職」という部分のみで、その背後にある「保育の場」=「家庭」という認識枠組は依然として存在しているといえよう。ではなぜ背後にある認識枠組は維持されているにもかかわらず、「保育職」=「女性職」という認識を変化させることが可能なのか。変化したのは「家庭」に付与される意味づけであり、この意味づけの変化が、保育職の性別職域分離解消へと向かわせる鍵になるのではないか。では具体的に「家庭」に付与される意味づけの何が変化したのか。次年度はこの点についても分析を重ね、最終報告に向けてさらなる検討を行いたい。
|