2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒューム道徳哲学の検討を中心とした、倫理における情念の位置づけに関する研究
Project/Area Number |
16720009
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 講師 (20367725)
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Keywords | ディヴィッド・ヒューム / 道徳哲学 / 徳 / 情念 / 情念のシステム / 共感 / 動機づけのヒューム主義理論 / マイケル・スミス |
Research Abstract |
今年度は、主として、ヒュームの道徳哲学における徳のあり方を情念論から読み解く研究を行い、その成果を論文として発表した(現在印刷中)。この研究を推進するために必要な文献の収集を行った。 1.今年度の主要な研究成果は、『アカデミア』第80号にて「ヒューム道徳哲学における徳と情念」と題する論文として発表した。この論文では、主に『人間本性論』でのヒュームの論述に注目しながら、ヒュームの情念論に基づいて、徳に対する是認のプロセスを構造的に解明した。その結果、ヒューム哲学における徳が、「情念のシステム」の中で、ネットワークの中の結節点として成立する、ということが明らかにされた。 2.同時に、現代メタ倫理学の動向についても主要な文献を収集し、ヒュームの道徳哲学との接点を探った。重要な接点として、「動機づけのヒューム主義理論」に注目し、現代の代表的なメタ倫理学者であるマイケル・スミスの議論をヒューム道徳哲学との比較の上で検討した。検討の結果、現代メタ倫理学で自明の前提とされているように思われる「欲求/信念」の心理モデルは、ヒューム自身の哲学的枠組みから著しく逸脱したものであり、このモデルに依拠してのヒューム批判は不毛である、ということが指摘された。これについては、ヒューム研究学会第15回例会にて「情念の倫理学への試み:ヒューム道徳哲学とメタ倫理学的ヒューム主義の裂目をあぶりだす」と題して報告を行った。 3.また、研究論文以外の研究実績としては、以下のものがある。 ・専修大学にて開催された現代倫理学研究会において、『思想』2004年5月号の特集「倫理学と自然主義」に関してコメンテイターとして報告を行った。 ・『イギリス哲学研究』第28号(印刷中)において、成田和信『責任と自由』の書評を執筆した。
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