2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 承律 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 講師 (10361560)
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Keywords | 出土資料 / 上海博物館蔵戦国楚竹書 / 楚簡 / 容成氏 / 儒家 / 古帝王 / 諸子百家 / 尭舜禹 |
Research Abstract |
1.「上海博物館蔵戦国楚竹書《容成氏》の古帝王帝位継承説話研究」(『大巡思想論叢』17、韓国、大巡思想学術院、2004年6月、197〜225頁) 【概要】上海博楚簡『容成氏』の中で特に古帝王帝位継承説話は、主として郭店楚簡『唐虞之道』や『荘子』『墨子』『管子』『荀子』などと思想史的に直接的な影響関係にあった。そして思想史的には、『唐虞之道』と同様戦国後期から末期の移行期に統一の気運の高まりつつあった中国を支配するに最も相応しい新しい帝王像や理想的な帝位継承、政治像などを提言しようとした士や客の立場が反映されていると位置づけられる。 2.「上海博楚簡『容成氏』の尭舜禹禅譲の歴史」(『中国研究集刊』36、2004年12月、75〜97頁) 【概要】上海博楚簡『容成氏』の尭舜禹禅譲の記述には大略次の五つの思想的特徴が見られる。(1)尭の政治のあり方として信賞必罰の法家的統治方法を取らなくてもよく治まったという説話は、戦国後期から末期以降に成立した思われる諸文献に多く見られる。(2)尭のような天子の禅譲と万邦の君のような諸侯のそれとを意識的に分けて述べることは、『荀子』正論篇で天子レベルの禅譲と諸侯レベルのそれとを意識的に分けていることと形式上同じである。(3)舜の貧賎さを表す表現及びその数は『墨子』尚賢中篇と一致している。しかし、挙用の原因・理由として舜の孝子説話を利用したり、「天地人民の道」の具体的な内容として「政・楽・礼」のような儒家の徳目や政治理念(礼楽の方)が特に目立ったりすることから見れば、やはり墨家系の文献というより儒家系の文献と見なした方がよいと考えられる。(4)「天地人民の道」の具体的な内容として「政・楽・礼」が取り上げられていることは、『荘子』の天人関係論及び『荀子』の天人の分の思想とをふまえて登場した『左伝』や『礼記』などに見えるような新しい天人関係論の思想史的流れと軸を同じくするものと考えられる。(5)『容成氏』の尭舜禹禅譲説の思想的特徴と最も近いのは『唐虞之道』と『荀子』成相篇である。以上のことを考えれば、古帝王帝位継承説話の思想史的位置づけと同様、荀子や荀子学派と相互影響関係にありながら、法家とは鋭く対立し、かつ道家思想の一部を摂取した儒家の一派の作と推定される。しかし、尭の時代の叙述の中には、尭の天子となった経緯の記述や「賢」の基準の提示など、『容成氏』にしか見えないユニークな描写や思想が含まれているのも看過してはなるまい。
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Research Products
(2 results)