2004 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀における「分析」の歴史:精神分析・現象学・分析哲学と言語の「存在」
Project/Area Number |
16720018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 和之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00293118)
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Keywords | 精神分析 / フランス / ラカン / 言語 / 存在 / 他者(たち) / 絵画 / フロイト |
Research Abstract |
平成16年度は、現象学と精神分析の接点に位置するメルロ・ポンティを一つの焦点として、これらの領域の関係を考察するとともに、精神分析の分野に現れる「分析」概念と言語の「存在」との連関を考究した。考究にあたっては、この連関が最も先鋭化した形で現れている、フランスの精神分析家ジャック・ラカンの業績を中心に検討した。論考「ラカン---帰郷(ノストス)なき望郷(ノスタルジー)」では、ラカンの言語観をフーコーの『言葉と物』における議論との関わりで位置づけながら、言語の「存在」の問題を、ラカンのいわゆる「跳躍」すなわち他者の欲望の想定の瞬間にかかわるものとして提示し、研究の大まかな方向を示した。さらに『フランスとその<外部>』では、分担執筆部分の論考「「抵抗」するフランス---精神分析の言語論的展開への道」(pp.51-70)において、ラカンの「シニフィアン」概念がまさに言語の「存在」を問題にすべく練り上げられてゆく過程を、同時代の分析家D・ラガーシュとの論争に注目して記述した。更に日本メルロ=ポンティサークル第11回大会シンポジウム「メルロ=ポンティと精神分析」における提題「枠の効果---ラカンにおける1960年代の視覚装置」では、ラカンの絵画をめぐる議論を、言語と密接な関係をもつ「大他者」の問題化の試みとして提示した。この提題の準備過程で着想された、それ自体ひとつの謎であるような「他者たち」という考え方は、日本ラカン協会第4回大会シンポジウム「生成するセクシユアリティ」における提題「言語から性へ---理論的架橋の試み」に引き継がれ、フロイトの指摘した「幼児の性理論」を、すぐれて言語的な関係であるいわゆる「(愛の)要求」との関わりで位置づけるにあたって重要な役割を果たした。またフランス国立図書館において、分析家の養成の問題を中心にフランスの精神分析に関する資料の調査・収集を行った。
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Research Products
(3 results)