2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀西洋医学言説における「現代性」の指標とその発展-ビシャからコッホへ
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16720019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 祐理子 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (30346051)
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Keywords | 西洋医学 / 19世紀 / 現代性 / コッホ / ビシャ / パスツール / レーウェンフック / 言説分析 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った、19世紀における微生物学の成立とその前史にかかわる文献・資料収集、およびそれらの資料の分析についての他の研究者との意見交換などの活動は基本的にこれを継続した。それと同時に、収集した資料の分析を進めることにより多くの時間を配分するよう努め、この分析・整理が進んだ結果として、口頭による研究報告と論文の形での研究成果発表の機会をより多くもつよう試みた。これらを通じて、19世紀末の微生物学の成立がヨーロッパ各国での同時並行的な近代医療制度の発展のなかで果たした役割に関する医学史上の論争についての認識を深め、一方では微生物学と化学技術の発展史との関係を重視するとともに、他方では化学的言説における「産業」と「科学性」といった一見別種のものと思われる多様な関心の混在について、これを19世紀の極めて重要な時代環境を反映するとともに20世紀の生命科学の基盤をなしたものとして重要な研究主題とするにいたった。研究代表者は科学的言説の形成にかかわりながらこれらの多様な関心が生み出すこととなる、「科学的知見」の発展における偶然性なるものの果たす意義についても、その重要性を強く主張したい。さらにこの「言説における科学性」をささえる要素を明らかにすることを目指して、これが19世紀において独自の展開を示したという仮説にもとづき、その特殊性を照らし出すために、微生物に関する18世紀以前の言説についてもこれを分析することに努めた。なおこれらの新たな問題設定のもとでの資料調査のために、パリ・パスツール研究所およびロンドン・ウェルカム医学史図書館への出張は行われた。
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