2004 Fiscal Year Annual Research Report
バウハウスにおけるカンディンスキーの芸術および芸術思想の認知論的分析
Project/Area Number |
16720030
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Research Institution | Aikoku Gakuen University |
Principal Investigator |
江藤 光紀 愛国学園大学, 人間文化学部, 講師 (10348451)
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Keywords | カンディンスキー / 像の線状性 / 色彩の心理学的効果 / バウハウス |
Research Abstract |
当該テーマの予備的考察として、今後の分析の方向性とアプローチの基本的枠組みをとりまとめた。バウハウス・アルヒーフに残されたカンディンスキー・クラスの生徒の作品を見ると、色彩の用法から角度に至るまで、相当程度限定された意味作用を徹底して身につけさせようと意図していたことがわかる。この点についてはすでにPoling, ClarkV.が一次資料をまとめているが、アルヒーフの資料を再調査し、バウハウスでの講義の内容なども考慮しつつ、その真意についての更なる考察を続けたい。今年度の研究から明らかになった分析の枠組みの概略は、以下のようなものである。 意味作用の担い手として、構成と色彩の二点から考察する。二次元平面上の構成は眼に対して一気に与えられるが、抽象作品における空間性は統一的な消失点を持たないため、鑑賞者が作品の構造を空間性のうちに再構成する認知作用までをも視野に入れると、作品は時間の概念を含むことがわかる。それは言語の線状性とは同一ではないが、共通性もある。一方、カンディンスキーは色彩を角度と結びつけ、心理学的な効果に基づきその意味合いを規定している。これも言語の意味伝達作用と同一ではないが、共通性を持つ。カンディンスキーの芸術思想の核心にはこうした言語との親縁性があり、バウハウスでの教程はそれを実践したものであると思われる。この時代の彼の作品は相当程度整理されたシンタックスに基づいて描かれているように見えるが、その源泉を明らかにするためには、ミュンヘン時代に見られる試行錯誤をもまた、丁寧に跡付ける必要があろう。 来年度以降は、こうした芸術思想を作品や具体例に即して分析してゆきたい。
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