2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720034
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Research Institution | Toyama National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
宮崎 衣澄 富山商船高等専門学校, 国際流通学科, 助手 (70369966)
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Keywords | ロシア正教古儀式派 / イコン / ヴィグ共同体 / ロシア |
Research Abstract |
ロシア正教古儀式派ヴィグ共同体のイコン研究において、モスクワの諸美術館で収集したイコン資料を分析する作業を中心にすすめた。ヴィグ共同体で制作されたイコンはテンペラ画、銅製イコン、木彫イコンがあるが、本年度は木彫イコンを中心に研究を行った。木彫イコンは、テンペラ画のイコンと比較して現存数が圧倒的に多いにもかかわらず(テンペラ画は数10点程度であるのに対して木彫イコンは200点以上)、研究者の関心は低くロシアでも本格的な研究がおこなわれていない。そこで美術館で筆写または写真撮影した資料をカタログ化して、木彫イコンの図像を分析した。分析は次の手順で行った。はじめにすべての要素(十字架を囲む背景枠、ゴルゴダの丘、槍と杖の描写、銘文の位置など)が一致するイコンを分類した。この分類により、背景枠別に述べるとアーチ型に3つ、円、楕円に各1つの計5つのモデルパターンが存在したことが明らかになった。次に背景枠の図像が相違するものの、ゴルゴダの丘やエルサレムの町の図像など細部の描写が一致しているイコンを取り上げて分類した。この分類により、アーチ型の1つのモデルと楕円型のイコンにおいて、ゴルゴダの丘、エルサレムの町、槍と杖の図像が一致している例が見られた。調査した木彫イコンでは図像が完全に一致する例がないことから、細部の図像であっても複数箇所同じ描写が繰り返されることはまれであり、同じ職人集団によって制作された可能性が高い。今回調査したイコンの中では、このグループに属すると考えられるイコンはアーチ3点、楕円10点の計13点であった。制作地は収集場所からダニーロフ・レクサ修道院のいずれかであり、制作時期は現存する銘文から共同体の後期である19世紀前期〜中期と推定される。
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