2004 Fiscal Year Annual Research Report
中国南北朝時代の俑の様式変遷に関する調査研究-地域性からの考察を中心に-
Project/Area Number |
16720036
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Research Institution | The Association for the Advancement of Fine Arts, Osaka |
Principal Investigator |
小林 仁 財団法人大阪市美術振興協会, 学芸課, 学芸員 (00373522)
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Keywords | 俑 / 南北朝 / 隋唐 / 中国美術 / 中国考古 / 様式変遷 / 北魏 / 南朝 |
Research Abstract |
本年度は当初研究実施計画から調査地域の一部変更や追加があったが、中国現地調査を中心に南北朝時代の俑の実物調査と関連資料の収集を行った。 1、中国調査(1)〜西安地区、安康・漢中地区等 西安地区では新発見の北魏俑、長安区出土の北朝から隋唐時代の俑、昭陵陪葬墓出土の俑等の調査を行った。とくに北魏俑は近年新たな発見があり、他地域と異なる独自の様式解明の手がかりが得られた。また、西安地区の南北朝から隋唐時代の俑の様式変遷や編年、さらに工房組織の問題についても多くの新知見が得られた。一方、安康・漢中地区では陶俑残片の調査から造形特徴や制作技法について考察を行い、鉄芯や木芯の使用などが確認できた。また、当該地域の唯一の紀年墓資料である安康新康厰梁天監5年墓(506年)出土の陶俑の全体像を把握できたことは、安康・漢中地区を中心に出土する独自の様式の俑についてその位置づけや年代の問題を解明する上で大きな収穫となった。 2、中国調査(2)〜南京地区等 南京地区では博物館及び個人所蔵の南朝俑の調査を行い、また俑の出土状況などに関して現地研究者と意見交換を行った。南朝俑としては数少ない紀年墓資料や未報告の新資料なども実見でき、南朝俑の造形特徴や制作技法、さらに編年の問題に関して多くの知見が得られた。この他、南朝墓の特色といえる画像博についても南京地区及び常州地区で調査を行い、墓葬内における俑との関連を中心に考察を進めた。 3、その他 北魏俑をはじめ近年中国で出土した南北朝から隋唐時代にかけての各種重要文物が一堂に出品された米国メトロポリタン美術館の『走向盛唐』展を参観調査し、また同館主催のシンポジウム及び研究者向けワークショップに参加し、米国の中国美術研究者との意見交換を行った。さらに、カナダのロイヤル・オンタリオ美術館では北魏の紀年墓資料をはじめ南北朝から隋唐時代の俑の豊富な所蔵品を特別に調査することができた。
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