2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720045
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂元 昌樹 熊本大学, 文学部, 助教授 (70346972)
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Keywords | 日本浪曼派 / 保田與重郎 / 津村秀夫 / 近代の超克 / 文学史の方法 |
Research Abstract |
研究代表者による過去の研究を発展させながら、1930年代から40年代にかけての「日本浪曼派」の文学・思想運動に関して以下のような調査研究を行った。 (1)『コギト』『日本浪曼派』『文芸文化』等に代表される「日本浪曼派」の運動の柱となった一連の雑誌群に関して、それらに著述を掲載した個別の執筆者のテキストの検討を進めた。また、「日本浪曼派」の運動と同時代の美術ならびに映画等のメディアやジャンルがいかに接点を持っていたかを考察するために、「日本浪曼派」の周縁に存在した美術・映画関係者に関しても調査を行った。特に朝日新聞社の映画批評欄を担当し、一連の戦時下の映画論で知られる映画評論家である津村秀夫(一九〇七-一九八五)の映画批評に関して調査研究を行い、この映画評論家と「日本浪曼派」運動との接点を検討し、座談会「近代の超克」に象徴される戦時下日本の思潮に関して新たな観点を導入した(社会文学会春季大会研究発表・二〇〇四年六月一三日・日本女子大学)。 (2)「日本浪曼派」運動の支持層を含んでいた同時代の総合雑誌や、戦時中の日本の植民地における雑誌等に関しても、その執筆者・テキスト・編集状況に関する基本的調査を進め、それらと「日本浪曼派」運動との関係の検証のための前提を整備した。そしてこの時期の「日本浪曼派」運動が一定の潜勢力を保持した背景の分析のために、同時期の保田與重郎による一連の古典評論において看取される思考と論理の構造を検討した。特に保田による一九四〇年代の代表的な評論『万葉集の精神』に象徴される文学史をめぐる構想に関して、そこに顕在化した同時期の国文学アカデミー批判と集団的公共性の再構成の企図について考察し、一連の保田による戦略の持っていた展望と限界点を指摘した(「<文学史>の方法-保田與重郎とその古典批評」二〇〇五年三月)。 上記のように、「日本浪曼派」の運動をめぐる周縁の諸動向の検証と思想構造の分析を中心とした研究を遂行し、「日本浪曼派」の文学運動に関して総合的な検討を進めた。
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