2005 Fiscal Year Annual Research Report
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16720060
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
濱崎 桂子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (00336819)
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Keywords | ドイツ語圏文学 / 移民文学 / 異文化表象 / 文化接触 |
Research Abstract |
今年度の研究では、1990年代以降のドイツにおける移民文学について、移民による異文化認識がどのようにテクスト化されているかを検証した。その際、昨年度に引き続き、主にエヅダマル(Emine Sevgi Ozdamar)の自伝的テクストを扱ったが、並行して、近年数多く出版されている、イスラム教圏出身の女性たちの自伝を収集した。その際参照したのは、これまでの文化研究で批判的に行われてきた欧米の書き手による異文化表象をめぐる議論、たとえば、新歴史主義(S.Greenblatt)文化人類学(J.Clifford)またドイツの文化学における他者表象研究(K.Scherpe)などである。さらに、書き手=ヨーロッパ的視点であることを前提としているこれらの議論を批判的に検証するために、ドイツの文化人類学において行われている「ドイツ」を対象とした文化人類学の先行研究も参照した。非ヨーロッパの視点からみたヨーロッパの表象を分析の手がかりにすることで、これまでの移民文学をめぐる議論が想定してきた、「他者の視点」をもった書き手としての移民作家という前提を批判的に検証しようとするものである。その際、民族誌、さらに旅行記といったジャンルのテクストの読み直しも行った。 この研究の中間報告を、2005年7月京都で開催されたドイツ・フンボルト財団主催のシンポジウム『日本のドイツ研究の視点からみた科学と文化』、および8月パリで開催された第10回ドイツ語学文学国際学会『諸文化の葛藤の中のドイツ研究』においてドイツ語による口頭発表を行った。前者では主に、ドイツについての民族誌としての移民文学の位置について、後者では、非ヨーロッパ人による移民文学とヨーロッパ人による旅行記とを、異文化表象という視点から比較検討したものである。
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