2004 Fiscal Year Annual Research Report
アラスカ・ネイティヴ作家Velma Wallisのテクストがなぜ今必要とされるか
Project/Area Number |
16720061
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
林 千恵子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教授 (10305691)
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Keywords | アラスカ / アラスカ・ネイティヴ / ネイティヴ・アメリカンの文学 / アラスカ文学 / 文学と環境 / 環境問題 / 自伝 |
Research Abstract |
本研究は、作家Velma wallisのテクストをアラスカ・ネイティヴ作家の系譜に位置づけ、アラスカ・ネイティヴ文学に共通する特徴と現代の傾向を明らかにしようとするものである。アラスカにはAthabaskans、Aleutをはじめ主に6グループ10万人余のネイティヴが暮らしているが、米国本土のネイティヴのように文学史上では注目されてこなかった。しかし処女作のTwo Old Women(1993)が世界的ベストセラーとなったWallisは、アラスカ・ネイティヴの文学と、彼らの社会が抱える問題に世界の目を向けさせようとしている。本研究ではテクストの比較分析(wallisとアラスカの代表的ネイティヴ作家や新進作家との比較)及び作家への取材を通して、現代のネイティヴ作家のテクストが訴えるものを探る。 平成16年度は、現地で資料収集とWallisやNora Dauenhauerへの取材の下準備を行った。Wallis作品の編集者Dr.Lael MorganやUniversity of Alaska Fairbanksの元教授Karen Colligan-Taylorをはじめ多くの研究者の助言を受け、UAFのRasmuson Library及びAlaska Native Language GenterでWallisに関する資料(Audio資料含)、代表的作家や新進作家等の資料、アラスカ文学研究の動向に関する資料を収集した。またネイティヴ文学に詳しいTlingitのリーダーやAnchorage Museum of History and ArtのDirector等を訪ねて聞き取りを行った。 上記の作業を進める中で、主に二つの点が注目された。一つは、アラスカ・ネイティヴ文学では「自伝」が主流である点で、このジャンルが必要とされてきた背景を明らかにする必要があると感じられた。もう一点は、環境問題との関連である。石油開発による生活圏の侵害、自然環境と一括りで彼らを観光対象と見なす視線など、ネイティヴの暮らしとそこから生まれるテクストは進行中の環境問題と切り離せない。現在、2点を分けて扱った論文を執筆中である。
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