2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヴィクトリア朝イギリスにおける居住空間と階級意識表象との関係の分析
Project/Area Number |
16720067
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
三宅 敦子 西南学院大学, 文学部, 助教授 (10368970)
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Keywords | 英文学 / 19世紀 / 文化史 / 階級 / 装飾 / 趣味 |
Research Abstract |
今年度は最終年度として以下の研究を行った。 1.過去2年間の研究で判明した趣味の向上という議論が当時の小説にいかに反映されていたかを探るためチャールズ・ディケンズとジョージ・ギッシングの作品を読んだ。 2.ギッシングの小説In the Year of the Jubileeでは、大衆の室内装飾の好みにおけるよい趣味の欠落と、その方面における教育の必要性に関する諷刺が描かれている箇所があることが判明した。またこの作品では、これらが女主人公のアイデンティティ及び階級意識と結び付けられて表象されてもいることがわかった。 3.文化史的な側面の研究については、1851年のロンドン万博に多大な貢献をし、その後ヴィクトリア&アルバート美術館の初代館長となったヘンリー・コールは1849年から1852年にかけて趣味の向上をうたう雑誌the Journal of Design and Manufaoturesを刊行していたが、その廃刊後、The Museum of Ornamental Manufacturesをつくった。その中に、同じくロンドン万博で監督者をしていたオーウェン・ジョーンズという建築家による室内装飾の原理に基づいて趣味の選別を行い、悪趣味の展示品を集めた「戦慄の間」を作った。これは当時話題になり、The Illustrated London Newsで報道されHousehold Words(1852)では諷刺の対象となっていることが判明した。 4.上記3の内容が、いわゆる社会問題小説としてのみ見られがちなディケンズの小説Hard Times の中で諷刺されていることが判明した。 5.上記1〜4の内容を平成18年9月のヴィクトリア朝研究会(於:成蹊大学)で発表し、裏面記載の論文にまとめた。
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