Research Abstract |
平成17年度は,夏期,春期計2回の現地調査を実施し,ゴジャール・ワヒー語に関する基礎語彙収集と,民族誌資料収集の継続作業を行った。 夏期調査は2005年8月〜9月の約2ヶ月にわたって実施した。作業内容は主に,昨年度の基礎語彙収集の継続作業である。特にこの調査では,これまでの主な調査対象である,Gulmit,Sisuni二村での基礎語彙収集に加え,2004年のジープ道開通までほぼ孤立村落であったため古い,言語・文化形態を残していると予想される,ゴジャール地域北東部のシムシャール村およびその夏営地への実踏調査を行い,家畜関連用語,同村落特有語彙の収集等を行った。 春期調査は,2006年2月末〜3月に実施した。ここでは,ゴジャール地域最大の祭礼行事である,taghm祭(春祭・種まき祭)の調査が目的であった。本祭は,近年のカラコルム・ハイウェイ開通後の換金作物ジャガイモの導入により,小麦栽培および小麦栽培関連行事が減退する中で,その記録の緊急性が指摘される。本調査では,撮影,録画を中心とした記録,および,関係者を対象とした聞き取り調査による,同行事関連語彙補充作業等を行った。 この他,2005年6月には,ロンドン大学SOAS図書館において,同言語調査には必見であるが現在日本国内では入手不可能な,同図書館所蔵のD.N.R.Lorimerによるワヒー語に関する報告書の閲覧および,パミール諸語に関する資料収集を行った。 また,本年度は,昨年度までで終了した服部基礎語彙分を中心に,ワヒー語に関する基礎語彙(約2000語),および音素体系に関する論文を出版し,同基礎語彙音声資料を含むウェブサイト(http://www.coelang.tufs.ac.jp/multilingual_corpus/wakhi/)を作成した
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