Research Abstract |
本研究の目的は,言語音声(特に外国語音声)の音節リズムの知覚および産出を左右するさまざまな音声学的・心理学的要因を検討し,音声知覚と音声産出の共通点や相違点を探ることである.具体的には,要因を,(1)語彙的要因,(2)音韻構造に関わる要因,(3)音響的要因などに大別し,これらの要因と人間による韻律情報処理過程との関係を明らかにする. 計画第2年度にあたる平成17年度では,まず初年度に得られた(2)音韻構造に関わる要因および(3)音響的要因に関する実験結果をさらに分析した.その結果,発話速度のような音響的要因は,英語話者による日本語特殊拍音素の知覚同定率には強い影響を及ぼすものの,日本語話者による英語音節数同定率には殆ど影響を及ぼさないこと,音節構造の効果にはOnSet(頭子音)とcoda(尾子音)の間に非対称性が存在し,onsetの数はcodaの数より成績をより強く左右することなどが明らかとなった.これらの成果の一部をまとめ,音響学・外国語学習分野の2つの国際会議にて発表した. また,(1)語彙的要因の影響および知覚と産出との関係を探るための実験に向けて作業を開始した.知覚については,単語の音節数同定率を尺度に,また産出については,被験者の発話の音響分析や発話中の挿入母音の頻度などを指標とし,知覚の困難度と産出の困難度との相関を分析することで,言語リズムから見た知覚・産出間の関係を探る.さらに,英単語への主観的親密度や外来語(カタカナ語)の有無が,単語の音節構造を正確に聞き取る・発音する能力にどの程度影響を及ぼすか検討する.そのためには,音節構造などの余剰変数が適切に統制された単語を使用する必要があるため,まず英単語の音節構造,意味,外来語の有無などを記録したデータベースを作成し,それを基に単語候補を選定した.これらの候補について日本語話者から主観的親密度評定の調査を実施し,計画最終年度に向けての準備を行った.
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