2004 Fiscal Year Annual Research Report
西洋基督教宣教師による初期漢訳聖書(その語彙と文体)の系譜に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16720095
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
塩山 正純 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 助教授 (10329592)
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Keywords | 中国語訳聖書 / 四史攸編 / 神天聖書 / 聖経 / バセ / モリソン / マーシュマン / 宣教師の学んだ中国語 |
Research Abstract |
近代におけるキリスト教来華宣教師の「中国語訳聖書」は、西洋人(宣教師)によって外側から外国語として学習し研究された19世紀初頭の中国語の一端を見ることができる。中国語訳聖書の全訳の嚆矢は、モリソン訳『神天聖書』(1814-1823)で、ほぼ同時期にマーシュマン訳『聖経』(1815-1822)がある。またモリソンが翻訳時に参照したと言われ、18世紀初頭に翻訳されたバセ訳『四史攸編』があり、3者は初期中国語訳聖書の系譜のなかで非常に重要な価値を持っている。3者の本文の比較対照と、語彙索引によって語彙及び文体の異同を調査し、聖書の翻訳にあたり参照されたと思われる白話作品や吏文などを参照しつつ、その継承関係とそれぞれの特徴を明らかにすることが本研究の目的である。 その第一歩として本年度は、夏期休暇を利用して、大英図書館、フランス国立図書館にて資料収集を行い、初期中国語訳聖書『神天聖書』『四史攸編』『聖経』等の聖書類原本を閲覧・複写、マイクロフィッシュを作成依頼した。入手後ただちにマイクロフィッシュの複写と印刷、簡易製本、聖書本文のテキスト入力作業を行い、電子ファイルを作成した。17年度で3聖書(約2000葉)の本文入力をほぼ完了し、『四史攸編』については語彙索引(初稿)が完成した。また、東西言語文化接触研究会などで、国内の関連分野の研究者と意見交換し、関西大学増田文庫等の国内図書館で資料閲覧・収集を行った。 3月には国際シンポジウム(上海)で研究成果の中間発表を行った。まず『四史攸編』の概要と、『神天聖書』『四史攸編』との関係を調査したうえで、『四史攸編』の4福音書合訳部分である「四史攸編耶甦基利斯督福音之會編」について作成した全語彙索引(初稿)をもとに、使用されている幾つかの語彙と文体について考察を試みた。これまでの論考では、その文体が多分に口語的であると指摘されているが、語彙をみるかぎり、とくに白話の要素がつよい語彙が多く用いられているわけではない。それでも印象としてはやはり白話的な文体であるのは、句末助詞の多用によるところが大きいことが挙げられようが、興味深いところではある。白話要素の語彙が少ないにも関わらず、文章全体としては白話的なのか。その文体や語彙の特徴の根本的な疑問については、継続して白話、外交資料等の吏文などと比較対照しながら詳細に調査したい。
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