2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720096
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
奥村 佳代子 関西大学, 文学部, 助教授 (10368194)
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Keywords | 唐話 / 岡島冠山 / 唐通事 / 『太平記演義』 |
Research Abstract |
1、唐話を扱う際には、何をもって唐話資料とするかが重要なポイントとなると思われる。しかし、唐話の全貌が明らかにされてはいない現段階では、唐話資料の発掘という意味においても、対象資料を明確に限定する方法ではなく、唐話資料としての可能性を有すると考えられる目安を改めて想定し、資料の収集と整理を行なった。本研究で目安として想定したのは、書き手が唐通事である、書き手が唐話学習者である、内容が長崎での唐人貿易に関係がある、日本の講史小説や浄瑠璃の翻訳である、という4点である。これらの点を踏まえたうえで、唐話と唐話をめぐる人々という視点から唐話の諸相を整理すると、大きく次の2種類に分けることができると考えられる。 (1)長崎:唐通事(中国人唐通事、日本人唐通事)を中心とする世界の唐話 (2)江戸:儒者を中心とする学問の世界の唐話および作家を中心とする文芸の世界の唐話 上の基準に基づき、本年度新たに入手した資料は、関西大学図書館所蔵『太平記演義』、県立長崎図書館所蔵『訳家必備』、東北大学図書館所蔵『瓊浦佳話』、天理図書館所蔵『東武麹巷角觝紀事』などである。 2、1に挙げた目安と唐話の2分類に基づき、基礎作業として、岡島冠山の『太平記演義』(『太平記』の中国語訳)の言語を中心に、文法と語彙の面から分類・整理した。岡島冠山の『唐話纂要』などの唐話書は総合的に見て上記1の(1)に属すると考えられる。「開江」や「則個」の使用に冠山の他の唐話資料との共通点が見られるが、全体的に文言的であり、むしろ上記1の(2)の要素を含む資料であるとの結果を得た。
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