2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本語における「とりたて」の体系化に関する記述的研究
Project/Area Number |
16720102
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 助教授 (00341967)
|
Keywords | とりたて / 副詞 / トクニ / コトニ / トリワケ |
Research Abstract |
本年度は、とりたて副詞に分類される諸形式のうち、トクニ・コトニ・トリワケの三種類について考察を行った。 三種類の副詞の用例を分析した結果、それぞれの特徴が以下の通りであることが明らかになった。 ・トクニには、「特別に」と類似した意味に解釈される「特別に」用法が存在する。 ・トリワケには、他の副詞的成分を程度性の面から修飾する用法が存在する。 ・コトニは、「[コトニ〜だ]+否定」という関係で否定表現と共起する解釈が不自然になる。 次に、これらの特徴をもとに、それぞれの用法についてとりたて機能の観点から分析した。その結果、トクニ・コトニ・トリワケが類似した意味に解釈される場合と、トクニが「特別に」と類似した意味を表す場合について、それぞれの意味が以下のように記述できることが明らかになった。 ・三種類の副詞が類似した意味に解釈される場合、<ある前提を満たす要素の集合の中で、当該要素がその前提を満たすものとして顕著であることを示す>。 ・トクニが「特別に」と類似した意味に解釈される「特別に」用法の場合、<ある前提を満たし得る要素の集合の中で、当該要素のみがその前提を満たし、それ以外は満たさないことを示す>。 以上の成果をもとに、次年度も継続してとりたて副詞についての用例の収集とその分析を行い、とりたて副詞の体系化に向けた考察を進めていく。
|