2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16720106
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 幸恵 長崎大学, 環境科学部, 助教授 (10315228)
|
Keywords | 宣命体 / 公卿日記 / 水左記 / 春記 / 権記 / 中右記 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、公卿日記の中の宣命体表記について考察を行った。 分析を行ったのは、『水左記』(伏見宮本・柳原本・九条本)、『春記』(九条本・東寺本)、『権記』(伏見宮本)、『中右記』(書陵部本)などであり、以下のような場合に宣命体表記が見られた。 (1)儀式の言葉をそのまま記す場合 ・少納言之座<尓>御酒給<へ>(< >内は小書き)(水左記・伏見宮本・別記) ・仰云、馬取<天>参来<万うこ>(春記・九条本・長暦四年四月二十二日条) (2)会話の内容を記す場合 ・関白命云、今只暫候<天>可給者(春記・九条本・長暦三年十一月二十三日条) ・被仰云、寶釼柄方<の>加不止<の>固<の>釘<の>片方抜落了(春記・東寺本・長暦三年十一月四日条) (3)書状の内容を記す場合 ・四條亜相被送書状云、北宮但不拝<と>侍歟(権記・伏見宮本・寛弘八年十二月二十六日条) (4)和歌や夢の内容を記す場合 ・送書状於少将許、其詞云、世中<乎>如何為猿<と>思管起臥程<爾>明昏<須>仮名 (権記・伏見宮本・長保二年十二月十九日条) (5)地の文で用いられる場合 ・而昨今堅固物忌候<天>(春記・東寺本・長暦四年九月二十一日条) ・而修行濫僧京寿<と>云者(権記・伏見宮本・長保二年正月二十日条) 日記ごとの傾向を見てみると、宣命体表記例の少ない『水左記』や『春記』では(1)の用例が殆どであり、(1)の用法が、公卿日記における宣命体表記のもっとも主要なものであることが分かる。『権記』では(1)以外では(3)(4)の例が多く見られ、『中右記』では(5)の例も多く見られた。
|