2004 Fiscal Year Annual Research Report
植民地台湾における社会教育・初等教育の国語教科書研究-「内地」「朝鮮」との比較考察-
Project/Area Number |
16720123
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
藤森 智子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 講師 (20341951)
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Keywords | 植民地 / 日本語教育史 / 日本語教育 / 同化政策 / 社会教育 / 国語教科書 |
Research Abstract |
旧植民地における日本語教育に関する研究は現在までに多数がある。しかしながら、その対象とする地域や時期は多岐にわたり、また日本語教育史が比較的新しい分野であることもあり、植民地日本語教育の全体像はいまだ解明の途中にあるといえよう。本研究は、日本最初の植民地であり、その経験が朝鮮、満州等他の植民地へも影響を与えたとしばしば指摘される台湾を取り上げ、植民地日本語教育の実態解明の一助としようとするものである。研究対象は、初等教育、そして社会教育用の国語教科書を取り上げ、その性格を分析する。台湾総督府は同化主義政策の下、半世紀にわたる統治を通じて一貫して日本語教育を統治政策の中心に置いた。殊に1930年代以降盛んになった社会教育は学校に通わない多くの民衆を引きつけ、その結果台湾社会における日本語普及に大きな役割を果たした。社会教育用教科書の研究は、日本語教育史のみならず植民統治史を検討する上でも意義があると思われる。 第一年目の本年度は、主に先行研究の検討および植民地で使用されていた教科書等の文献資料の収集を研究活動の中心に据えた。先行研究は国内外の日本語教育史や旧植民地史研究を中心に検討した。この時期の研究に対する研究者の視角は、初期には為政者の差別的な政策に重点を置いたものが比較的多く見られるのに対し、近年は政策面と同時に植民地社会の側にも視点を据え、豊富な一次資料から実態をつかもうとするものが見られるようになっているのが特徴的な傾向のように思われる。文献収集は、日本国内の他に台湾や韓国において主に旧帝国大学や関連資料を所蔵している機関にて行った。今年度は新たな関連文献の復刻版も出版され、収集の手間が一部省けたのは幸運であった。教科書の詳しい分析は次年度の研究課題とする。
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