2006 Fiscal Year Annual Research Report
対照修辞学に立脚した日本人向け英文ライティング教授法とモデル教材開発のための研究
Project/Area Number |
16720134
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
西川 純恵 日本医科大学, 医学部, 講師 (60373015)
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Keywords | 英語教育 / ライティング / 対照修辞学 / Second Language Writing |
Research Abstract |
日本語母語者の大学生向けに英文アカデミック・ライティング教授法を構築する目的から、文章作成のプロセスとしてアウトラインを重視した教育プログラムをデザインした。教養教育の英語科目(必修)履修者を対象にプログラムを実施し、アウトラインから第1稿を経て最終原稿に至るまでの学生のライティングのデータを収集し、その効果を分析した。結果として以下の点を明らかにした。 基本となるパラグラフ・ライティングの段階からアウトライン作成を導入することで、既得の日本語文章作成法を英語での文章作成に学生が転用させてしまう点について学生自身の気付きを促すことができる。特に、日本語小論文で用いる自分の体験に言及して個性を表す書き方や、文章全体の最後の部分で自分の見解を明らかにする書き方が、英語の文章作成では問題となることを意識化させる効果がある。同時に、パラグラフ内で抽象から具体への階層的な情報構造を構築させる訓練により、具体的な情報をカテゴリー化していく分析的視点・思考力を育成する教育効果が期待できる。 また、複数パラグラフからなるエッセイ・ライティングでのアウトライン作成重視は、導入部で論旨を表明しそれを本論部で裏づけるという英文エッセイの標準的な論理構成を定着させるのに有用である。これにより学生は、長さのある文章作成の際に、全体を見渡した論理構成を整えてから細部の英語表現を充実させるという1つの方略を獲得できる。エッセイ全体の論理の組み立てを図ることは、具体的な論拠をもとに一般化できることを導出していく思考面の鍛錬にもつながる。 アウトライン作成を中心に据えた本教育プログラムは、日本語母語者の大学生が英文パラグラフやエッセイに求められる論理構成に習熟することを念頭に開発したものであるが、今後プログラムを充実させていく上で、言語面と思考面の鍛錬の相互作用を視野に入れることが求められる。
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